一体改革で政府案 2015年までに消費税10%
医療・介護で給付抑制の項目案
6月末までに政府・与党による成案を得たいとする菅内閣の、社会保障と税の一体改革の政府案が6月2日に公表された。
社会保障を支える安定的な財源を確保するため、消費税の使途を限定し、2015年度までに10%へ段階的に引き上げることを明記。
このうち社会保障の充実には15年度時点で3・8兆円増、給付抑制で1・2兆円、差引2・7兆円を消費税1%程度で賄うとする。
給付抑制は、医療・介護分野の重点化・効率化だけで7000億円(表1)。各課題別に充実項目と併せて重点化・効率化項目が並べられ、病院・病床機能の分化・強化と連携等による平均在院日数削減。外来受診の適正化等、介護予防・重度化予防、在宅への移行等が打ち出されている。
さらに、医療・介護保険改革で5000億円程度を抑制(表2)。長期高額医療の高額療養費見直しによる負担軽減に応じた受診時定額負担導入、70〜74歳の2割負担だ。
この改革案に対し協会は、垣田副理事長の反対を表明する談話を発表した。
談話/社会保障抑制と消費税増税を前提とする一体改革案には断固として反対
副理事長 垣田さち子
政府は、6月2日の「社会保障に関する集中検討会議」において社会保障改革案をまとめた。改革案は、厚生労働省が提出した「社会保障制度改革の方向性と具体策」に基づく改革案と内閣府と財務省が提出した報告書に基づく財源案等が盛り込まれ、社会保障の改革のためには2015年までに段階的に消費税率を現在の5%から10%に引き上げることを明記した。
社会保障改革案では、現状の問題点として世代間の給付と負担のアンバランスを挙げ、現役世代の先行きに対する不安感・負担感や将来世代への影響も考え、「世代間公平」を図っていくことが喫緊の問題とし、そのアンバランスを解消するには、国民間の「共助」の枠組強化により社会保障制度の機能を強化する方向で取り組むとしている。そこには政府の責任で解消することには一切触れず、国民の「共助」での解消を強調する。
医療分野では利用者負担総合合算制度の導入や高額療養費制度の見直し、非正規労働者への健康保険の適用拡大等を提示したが、窓口定額負担の導入や医療提供体制の機能分化・集約化の強化、平均在院日数の減少等との抱き合わせで盛り込むなど、改革案は自公政権による構造改革路線の踏襲であり、社会保障抑制策の更なる強化に他ならない。
改革案は国民の「自助」「共助」を強調し、国の責任を放棄していると言わざるをえない。
このような問題を持つ社会保障改革案を実現する財源として出された消費税増税に納得できないのは自明の理である。社会保障は応能負担の仕組みにより所得再分配の役割を担い、貧富の差を越え誰もが等しく医療や介護を受けられることを保障している。租税も社会保障と同じく所得再分配機能を持っているが、消費税はその機能を持っていない。そのために、所得の低い人に税の痛みが大きくのしかかる。逆進性の強い消費税を社会保障の目的に使うことは、社会保障が持つ応能負担原則を否定することになる。社会保障を厚くしようとすれば消費税増税に繋がり、より良い医療や介護を求めれば自らの首を絞めることになる。
社会保障の財源をどう確保するか、国民的議論が必要な時である。しかし、国難とも言われる震災や長引く不況の中、十分な議論もなく消費税の増税を持ち出すのはあまりにも拙速に過ぎる。また、国民に問わずして、消費税増税ありきの提案は到底許されることではない。
社会保障抑制と消費税増税を前提とした「社会保障と税の一体改革案」には断固として反対を表明するものである。
2011年6月13日