レセプトオンライン「神奈川訴訟」原告団、日肝協と懇談
4月4日、レセプトオンライン請求義務化撤回「神奈川訴訟」原告団は、新宿農協会館において、日本肝臓病患者団体協議会(日肝協)とオンライン請求義務化問題についての懇談を行った。原告団からは入澤幹事長、高橋世話人と事務局が出席。日肝協からは西村愼太郎常任幹事、沖健一幹事が出席した。今回の懇談はオンライン請求義務化の問題点を患者側にも理解してもらい、裁判傍聴の協力等を得る目的で行った。
冒頭、入澤幹事長が義務化の問題点として、(1)オンライン化に対応できない医師の閉院(2)オンラインで送付することによる情報流出の危険性(3)診療情報を集約、分析して「医療の標準化」を図ることでの保険診療範囲の制限―等に触れ、その後意見交換を行った。
日肝協は、フィブリノゲン投与の問題に端を発し、患者の中では医療内容を詳しく知りたいというニーズは依然として高い。オンライン化によるデータ集約で「医療内容の公開が進むと思っている患者もいる」と説明した。これに対し、入澤幹事長は、レセプトやカルテ情報の開示を患者が希望する場合、現在でも原則開示していると紹介。さらに、「レセプトはあくまで請求書であって、カルテとは違う。患者への医療内容が全て反映されるわけではない」として、オンライン化で医療内容の公開は進まないとした。併せて、舛添要一厚生労働相がレセプトの電子化が薬害防止に役立つと発言したが、「レセプトには投薬内容が全て記載されるわけではない。レセプトデータは既に投薬した後の請求明細で、薬害防止にはつながらない」と強調した。
また、日肝協の「オンライン化で『医療の標準化』が図られれば、最適な治療方針が確立されるのでは」との問いに、「レセプトデータの集約は、請求費用の蓄積でしかない。疾病ごとに『医療の標準化』を図ることで、医療費抑制の目的に使用される危険性がある」と説明した。最後まで入澤幹事長は「レセプトをIT化することで、患者が受ける医療内容が向上することはない」ことを強調した。また、高橋世話人からは歯科医院が苦しい経営を迫られている現状を紹介。オンライン化の費用が捻出できない医療機関があることにも触れた。
日肝協は、オンライン請求義務化の問題を5日の日本難病・疾病団体協議会で議論することを約束。5月末の総会でとりあげるかどうかも検討するとした。また、裁判傍聴の依頼については、「可能な限り協力したい」と回答。オンライン請求の問題点をまとめた患者向けのパンフレットを会議で配布したいとして、その場で手渡した。
オンライン「神奈川訴訟」原告団は、今後もこの問題を多くの国民に伝え、「義務化撤回」の世論が確立できるよう、患者団体等との対話を図るとしている。