レセプトのオンライン請求Q&A(15)
患者さんの診療情報の漏洩の危険性は?
Q、オンライン請求の問題点として、患者の診療情報が漏れることが危惧されています。しかし、紙レセプトに関しても、03年12月に運輸会社が兵庫基金から預かった審査済みレセプト約4千7百件を紛失していた事件や、07年9月に倉敷市の職員がレセプトを持ち出して商業施設のトイレに投棄した事件などがあり、危険性は同じではないですか。
A、神奈川県保険医協会が中心となって起こした「オンライン請求義務化撤回訴訟」では、訴状の中で、「パソコンによる情報処理によれば、小型の機器の中で膨大な情報を蓄積・加工することができ、その機器がインターネット回線と繋がれば、世界の隅々まで張り巡らされたネットワークに乗って、情報を瞬時に、多数の宛先へ送信することが可能である。今日の科学技術の下ではオンラインでの情報授受には常に情報漏洩の危険が伴っており、また、いざ漏洩してしまうと、従来の紙媒体による情報授受の場合と比較して格段に大きな不利益が個人に降りかかる。流出した情報を回収することは不可能であり、情報主体が受ける損害は極めて深刻である」と指摘しています。
そして、「医師・歯科医師である原告らは、医療のプロであり、ITのプロではない。IT関係は全く不得手である者もいる」ため、「情報漏洩事故や、その結果としての患者からの損害賠償請求を防ぐための方法を選択する機会を奪われ、いつこれらの事態が発生するかも知れないという不安と隣り合わせの状態に常に置かれる。このような不安の中では、原告らは、自己実現としての医療活動を全うすることができず、幸福を追求することもできない。したがって、本件改正省令は、医師・歯科医師である原告らの、憲法13条に基づく幸福追求権、自己決定権を侵害する」と指摘しています。