レセプトのオンライン請求Q&A特別編 早わかり義務化撤回訴訟

レセプトのオンライン請求Q&A特別編
早わかり義務化撤回訴訟

 2006年4月10日に出された厚生労働省令111号により、原則11年4月から医療機関による保険請求は「電子情報処理組織」(いわゆるオンライン)を用いることが義務化。紙や電子メディアによる請求は認められなくなる。

 今回の「レセプトオンライン請求義務化撤回訴訟」は、実質的当事者訴訟(確認訴訟)という形態で提訴する。現時点では損害賠償請求訴訟や差止請求訴訟で訴状を構成するのは難しいため実質的当事者訴訟とした。この実質的当事者訴訟は、行政事件訴訟法第4条に04年改正で下掲条文の下線部の例示が加えられたもの。従来の取消訴訟中心主義(=処分性)による救済範囲の狭さを補うものとして活用が期待されている。これまでは行政訴訟を起こすことが難しく、行政計画や行政立法に対して、当事者訴訟を起こすには解釈により判断されていたため困難があった。しかし、04年の法改正により、現実的に行えるようになった。

行政事件訴訟法(当事者訴訟)

 第4条  この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

 条文にある「公法上の法律関係に関する確認の訴え」を活用し、「原告らが保険医療機関として療養の給付の費用を請求するについて、電子情報処理組織を用いた費用の請求を行う義務のないことを確認する」ことを請求の趣旨とすることとした。

違憲・違法性

 以下の論点で違憲・違法性を問う。

1、営業の自由侵害

 オンライン請求義務化により、保険医を続けられなくなるというのは、憲法22条に反するという論点。

2、患者のプライバシー権侵害及び医師・歯科医師の人格権侵害
 

インターネット等での情報漏洩は後を絶たない。インターネット上に漏洩した場合、紙媒体と比べものにならない範囲に広がる。また、住基ネットの情報(氏名・住所・生年月日・性別)と比してもレセプト情報はセンシティブで、個人情報を守る責任を果たす観点からオンライン請求義務化は認められないという論点。

参 考

 オンライン請求の中で個人情報管理は審査支払機関のサーバーにデータを格納するまでが医療機関の責任となっている。個人情報保護法第20条では事業者に管理責任を定めている。

 個人情報保護法第20条「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない」

3、法律による行政の原則違反

 健康保険法や国民健康保険法によって省令に請求方法について委任しているが、あくまで事務的な委任であって、オンライン請求義務化のように国民の権利義務関係に影響を与えるのは国会での立法を必要とするという論点。

参 考

 日本国憲法41条「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」

 国家行政組織法12条「各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる」

(神奈川県保険医協会作成)

ページの先頭へ