マイナス改定の回避を要望  PDF

マイナス改定の回避を要望

 2012年度の診療報酬改定率を巡り、12月9日に厚労省と財務省の政務折衝が始まった。財務省は厚労省に対し診療報酬本体の1%程度引き下げを要求。薬価約1・23%と医療材料約0・09%の引き下げ分と合わせ、ネットで2・32%の引き下げ要求となる。

 改定率論議が大詰めを迎える中、協会は13日の第13回定例理事会で、全体のマイナス改定は絶対回避すべきとの要望書をまとめ、野田首相、安住財務相、小宮山厚労相に送付した。

要望

2012年度診療報酬改定で全体のマイナス改定は絶対回避することを要望します

内閣総理大臣野田 佳彦 様
財務大臣安住  淳 様
厚生労働大臣小宮山洋子 様

 国民生活の確保に向けた総理及び各大臣のご尽力に敬意を表します。

 さて、ご承知の通り今日の医療をめぐる状況は、前政権の「医療制度構造改革」がもたらした10年間に及ぶ医療費抑制政策の結果、急性期病院の勤務医だけでなく、地域医療を担う中小病院や医科・歯科診療所についても大変厳しい現実に直面しています。

 政権政党である民主党は、「Manifesto2009」において「医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する」ことを掲げられ、同「Manifesto2010」においても「診療報酬の引き上げに、引き続き取り組みます」と国民に約束されました。

 ところが、11月22日の「提言型政策仕分け」では、「医療サービスの価格全体の前提となる診療報酬本体について、『据え置く』6名、『抑制』3名という意見があったことを重く受け止めて対応されたい」との評価結果が出されました。本体改定率の据え置きは、前政権下の医療制度構造改革下で行われた2006年改定(▲3・16%)、2002年改定(▲2・70%)に次ぐ、2004年改定(±0)と同程度の医療費抑制策を実施するということです。

 これに対して、12月2日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、診療側だけでなく公益側、支払側からも痛烈な批判が出されたのは当然のことです。12月7日には中医協名で「2012年度診療報酬改定について」意見書が出され、「提言型政策仕分けなど財政的観点から、診療報酬本体について据え置きや抑制を求める意見があることも承知している」が、中医協として「それぞれの立場から我が国の医療を議論し、国民・患者が望む安心・安全で質の高い医療を受けられる環境を整備していく」ので、「2012年度予算編成に当たって、診療報酬改定に係る改定率の設定に関し適切な対応を求める」として、「本体据え置き・抑制」という乱暴な意見に翻弄されないように求めています。我々は、中医協の個々の協議内容に対して是々非々の立場ではありますが、支払側、診療側、公益側の三者が一体となりまとめられた異例の要求は、日本の社会保障制度に対して責任ある立場からの切羽詰まった要求であり、重視するべきです。

 12月2日の中医協で報告された薬価の乖離率は約8・4%で薬剤費全体の削減額は約5000億円、医療材料価格の乖離率は約7・7%で同削減額は約370億円で、薬価と医療材料価格の改定率は2010年度改定と同様の▲1・32%並みになると報じられています。

 薬価・医療材料価格を改定するならば、少なくとも引き下げ分を財源にし、地域医療を担う中小病院や医科・歯科診療所が直面する不合理、例えば「診察にあたって、基本的な医療の提供に必要な人的、物的コスト」さえ保障していない低い再診料、異なる技術の在宅療養指導管理の算定制限、入院中の他医療機関受診、医療保険で診るべき維持期のリハビリテーション、地方自治体立病院で届出が多い13:1、15:1看護の入院基本料の引き上げなど是正し、改善するべきです。

 診療報酬は、医療機関が受け取る報酬であると同時に、国民が保険で受けられる医療の質や範囲を決める、日本の医療制度の根幹ともいうべきものです。政権政党の公約である医療全体の底上げを実現する責務を再度確認され、「適切な対応」として、薬価と医療材料価格の引き下げ分を全て本体改定に投入し、全体でのマイナス改定は絶対回避するよう、我々からも強く要望いたします。

2011年12月13日
京都府保険医協会
11年度第13回定例理事会

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