プログラム法案を批判 政策時局講演会で二木立氏
協会は、日本福祉大学学長の二木立氏を講師に「安倍政権の医療・社会保障制度改革と地域包括システムの行方」と題した政策時局講演会を10月5日に開催した。
二木氏はまず、社会保障制度改革国民会議報告について解説。70〜74歳の高齢患者の2割負担化や紹介状のない患者の大病院の外来受診時の定額負担導入等の負担増、特に入院「給食給付等の自己負担」などには賛同できないとしたうえで、負担増と給付の重点化で考慮すべきことが2点あるとした。
1点は、国民会議では「給付の重点化」や「療養の範囲の適正化」を明記した改革推進法の基本的方針に基づいて制度改革を議論せざるを得なかったこと。もう1点は、国民・患者・利用者の一律の負担増ではなく、「能力に応じた負担の仕組み」、具体的には高所得者の負担増と低所得者の負担減あるいは据え置きをセットで提案していることと指摘。
国民会議の審議結果を踏まえたとされるプログラム法案骨子の前文には、「(社会保障制度改革は)自らの生活を自らまたは家族相互の助け合いによって支える自助・自立を基本とし」と明記された。しかも、国民会議報告において互助に含まれる「家族相互の助け合い」までも自助に含めてしまったことから、プログラム法案の理念は、国民会議報告の理念とまったく異なるものとなった。今後国家財政や医療・介護保険財政の悪化を理由に、より一層の患者・利用者負担増や療養の範囲の適正化が実施される可能性があると指摘した。
続いて、「地域包括ケアシステム」について言及。地域包括ケアは単なる介護保険制度改革ではなく、医療制度改革と一体であり、主たる対象を都市部としたネットワーク構築の構想だとした。地域包括ケアシステム構想の変遷に伴い、2012年には「住まいと住まい方」が生活すべての土台・中心とされたが、13年には「本人・家族の選択と心構え」が基礎として入れられた。これは、独居あるいは夫婦2人暮らしの高齢者が増加するに伴い、常に家族に見守られながら自宅で亡くなるわけではなく、一定の孤独死をも覚悟・理解したうえで在宅生活を選択する必要があるということ。そうした高齢者をいかに地域で見守るかということが重要と結んだ。