プライマリーバランスの赤字幅3.9兆円に拡大/内閣府試算
内閣府は7月22日の経済財政諮問会議に、2011年度までの国と地方の財政状況の試算を提出した。07年度からの5年間で14.3兆円の歳出削減を実現した場合でも、11年度の国と地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支) は3.9兆円の赤字となる。08年1月の段階では7000億円の赤字と試算していたが、赤字幅が大きく拡大した。この日の会議でも、民間議員から「医療・介護の水準を維持するには消費税に頼らざるを得ない」との発言があり、今後の消費税率引き上げに関する議論に大きく影響しそうだ。
14.3兆円は考えられ得る最大限の歳出削減額で、社会保障費1.6兆円(国の一般会計ベースで1.1兆円)の削減も含まれている。プライマリーバランスの黒字化に向けて、社会保障費の自然増分から毎年2200億円の削減に取り組んでいるが、これを続けた場合でも4兆円近い赤字が発生する見通しとなった。
会議終了後の会見で、大田弘子経済財政担当相は試算の下方修正について「名目成長率の低下と足元の税収減による」などと説明。プライマリーバランス黒字化に向けた選択肢は、(1)歳出削減、(2)経済成長による税収増、(3)増税―しかないと訴え「骨太方針06でも2.2兆円分は増税で賄う考えが盛り込まれていた。プライマリーバランス黒字化を『絵に描いたもち』にはできない。必要な歳入改革を進める」と述べた。
この日の会議で、民間議員からは「危機をチャンスに変えるには抜本的な税制改革が必要」として消費税引き上げを求める意見も出た。近年の原油高などの影響で大幅な経済成長が見込めない上、社会保障費削減の「限界説」も強まる中、プライマリーバランス黒字化の実現には消費税引き上げなどの増税を進めざるを得ない状況となっている。ただ、福田康夫首相は09年度の消費税引き上げは困難だとしている。また、政府税制調査会の香西泰会長も消費税引き上げの時期や引き上げ率についての言及には慎重姿勢を示しており、増税の具体化に向けた議論は不透明な状況だ。
福田首相はこの日の会議でも「成長力強化と財政健全化の両立は容易ではないが、そのためにも内外の経済情勢に注意を払う必要がある。歳出削減努力をしっかり進め、国民ニーズの高い政策課題に取り組む必要がある」と述べるにとどめ、増税議論には言及しなかった。(7/23MEDIFAXより)