プライマリ・ケアで遭遇する皮膚疾患について/外科診療向上会レポート  PDF

プライマリ・ケアで遭遇する皮膚疾患について

 外科診療内容向上会を11月12日、京都外科医会、京都府保険医協会、大日本住友製薬株式会社の共催で開催。京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学教授の加藤則人氏が「プライマリ・ケアで遭遇する皮膚疾患の診断と治療」について講演した。

外科診療向上会レポート

 講演は加藤則人氏がたいへんわかりやすく話された。患者数の多い疾患は湿疹・皮膚炎群(40%、診療所のみでは50%)、足白癬などの浅在性真菌感染症13%、帯状疱疹や単純疱疹、疣贅などのウイルス性疾患9%、じんましん5%。これ以外には薬疹があり、これらについて詳しく診断と治療についてご講演された。

 湿疹とは点状状態、多様性、そう痒の三徴候をみたす皮疹であり、紅斑、丘疹、小水疱、鱗屑などの皮疹が混在して局面を形成しており、その発症機序より接触皮膚炎、手湿疹、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎に分類されている。

 接触皮膚炎は遅延型過敏反応によって生じ、抗原による感作は7〜10日かかり、一度感作された後に再び抗原にさらされた場合に24〜48時間で皮膚炎が惹起される。ピアスによるニッケル皮膚炎(18Kの場合はニッケル、24Kの場合は銅を含有)、ウルシ科の植物、イチョウの実、マンゴー、ココナッツ等の植物性のもの、ゴム製品(ラテックス)、抗生物質(リンデロンVGやゲンタマイシンにはフラジオマイシンが入っていてこれによる皮膚炎)、化粧品、香料、防腐剤、ステロイドそのものによるアレルギー、イソジン液のヨードの皮膚炎、ケトプロフェンテープによる光線過敏皮膚炎、麻酔のリドカイン(マキロンやボラギノール坐薬)による皮膚炎、皮革をなめすときにクロム使用による金属アレルギーもあり。

 脂漏性皮膚炎は頭皮、額、眉毛部、鼻唇溝などに常在する真菌(Malasezzia furfur)に対するアレルギー反応で淡い紅斑と鱗屑を主症状とする湿疹で中年以降に多く、紅斑があれば、2、3日ステロイド(強めのフルコートまたはロコイド)を使用する。その後、抗真菌剤ニゾラールクリームまたはローションを使用するマラセチアに対してはラミシールは効果が悪いとのことです。

 アトピー性皮膚炎は遺伝的素因と悪化因子が加わって増悪と寛解を繰り返して慢性に持続する疾患で掻破、体調不良、睡眠不足、発汗、ストレス、アレルゲン(ダニ、花粉、食物)が悪化因子となる、ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤による抗炎症療法とともに悪化因子の除去及び保湿剤によるスキンケア(入浴直後の体が湿っている間にぬること)、肌をごしごしこするのは皮膚のバリアーを破壊するのでよくない。泡で汚れを落とすだけでOKとのことであった。

 じんましんは膨疹を呈し数時間から長くても24時間以内に消退する。急性じんましんと4週間以上膨疹発作の持続する慢性じんましんがある。原因の同定されることが少ないが、原因として上気道炎、扁桃腺炎、歯根炎、副鼻腔炎などの感染症、抗生物質、NSAID、造影剤などの薬剤、たまご、そば、エビ、カニなどの食物などがある。

 浅在性真菌感染症については、爪白癬、外陰部に頻発するカンジタ疱等があり、体幹や四肢に生じたものは弧状・環状を呈することが多い。その他に介護老人施設でよくみられた疥癬はストロメクトール(イベルメクチン)の特効薬が出現して現在は2回の服用でよくなったとのことであった。

 薬疹については、薬剤性過敏症症候群(DIHS)、SJS、TEN等重症化するものもあり、抗生物質、抗けいれん剤、NSAID、抗尿酸治療剤は頻度が高い。全身の紅斑、粘膜症状、発熱等がある場合は、専門医へ紹介された方がよいとのことである。

 外用薬に関しては、顔、陰部、腋窩等へは経皮吸収が良いので弱めのステロイドを、手掌、足底は経皮吸収が悪いので強めのステロイドを、老人や乳幼児は共に薬剤の吸収が良いので弱めのステロイドを使用すること。

 皮膚の悪性腫瘍に関しては、有棘細胞がん、基底細胞がん、ボーエン病、パジェット病、メラノーマ等があり、特に悪性黒色腫にはダーモスコピーが診断に有効で四つの特徴ABCD即ち、1. Asynmetric 2. Border irregular 3. Color variegation 4. Diameter enlargement、があるとのことであった。

(中京西部・野見山世司)

2011年11月12日の「外科診療向上会レポート」で講演する加藤則人氏

講演する加藤則人氏

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