シリーズ環境問題を考える(126)
新しい農薬ネオニコチノイドによる汚染(2)
ネオニコ系農薬・有機リン酸系農薬はいずれも神経伝達を狂わせ、殺虫します。アセチルコリンは脳の主要な神経伝達物質で、ネオニコチノイドはアセチルコリン受容体に結合して、異常興奮を起こさせます。一方、有機リン酸系農薬はアセチルコリンの分解酵素を阻害して、不必要なアセチルコリンを蓄積させ、脳内、自律神経内、筋肉内など全身の正常な神経伝達を阻害します。両者の複合暴露(農薬を混合することも含む)によるコリン作動系の健康影響は、人体に多大な影響を与えます。
近年、喫煙研究の進展の結果から、ニコチンは低濃度でも遺伝子発現の異常など様々な人体影響を持つことが分かってきました。
母親の喫煙により、発達期における脳への影響で、乳児突然死症候群、注意欠陥・多動性障害(ADHD)のリスクが優位に高くなるという報告があります。ネオニコチノイドはニコチンと類似構造を持ち、体内で神経や筋肉、遺伝子にさえ大きな影響を与えます。ADHD、アルツハイマー病、パーキンソン病や神経・筋難病、がんなどの関連が疑われています。生態系にも人体にも大きな影響を与えている農薬に対して、日本の作物の残留基準が欧米に比べ何倍も緩やかで、米国の2〜10倍、EUの3〜300倍の基準値です。農薬の空中散布も野放し状態です。日本では、政界、行政、農薬・農機メーカー、農業団体、学者などが結びついた「農薬村」(「原子力村」と似た構図)が甘い基準を許し、予防原則を無視してきたと、識者、ジャーナリストや環境団体等が指摘しています。
ヒトの健康や生態系への悪影響が大きな問題になっているネオニコ系農薬に対し、使用規制と基準改定などの早急な政府への働きかけが必要です。
(環境対策委員・山本昭郎)