シリーズ環境問題を考える(104)  PDF

シリーズ環境問題を考える(104)

夢のリニア新幹線が破壊するもの

 先日、国交相の審議会で東京―名古屋間のリニア中央新幹線のルートが直線ルートで推進される可能性が高まってきたという新聞報道を見ました。

 8兆円を超える建設費をかけ、東京―大阪が67分で結ばれるという高度経済成長期だったら国中が沸き返るような夢の計画ですが、国中が先行きの不透明さに不安を抱いている21世紀の今、採算面だけでない大きな不安が私の頭の中をよぎります。それは、迂回ルート(A・Bルート)で迂回したあの場所をトンネルで突き抜ける、つまり、南アルプスのど真ん中に穴を開けるトンネルの建設計画です。南アルプスの荒川三山と塩見岳の間にトンネル!なんて発想は、『山と渓谷』の愛読者でなくても「それはないやろ!」と首を傾げたくなります。

 世界に誇る日本のゼネコンさんの技術を持ってすれば、3000メートル級の山脈のどてっぱらに穴を開けるくらい、なんてことはないのでしょうが、登山者であふれかえる北アルプスを尻目に、富士山の絶景をバックにして貴重な固有種の花が咲き誇る静かな南アルプスにトンネルを掘り、水脈や生態系を破壊するのはもう少しじっくり考えるべきです。リニアを造るなら神戸空港はなんだったのか、清流長良川や生物の宝庫だった有明海のその後の姿をじっくり見ながら、8兆円の使い道を考えてほしいものです。

(京都府歯科保険医協会理事・保団連公害環境対策部員 平田 高士)

この自然を突き抜ける計画!
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