シリーズ環境問題を考える(100)

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難しい食事指導

コンビニでおなじみのおにぎりとミックスサンド
コンビニでおなじみのおにぎりとミックスサンド

 日常の診療で肥満や糖尿病の患者さん(特に男性)や、また中学校の内科健診時に、食事の状態や内容を聞くと、「こしょく」が多いのに驚かされる。「こしょく」には「孤食」(本当に一人で、あるいは同じ屋根の下で家族がばらばらに食べる)、「個食」(同じ食卓で家族それぞれ自分の好きなものを食べる)、「粉食」(パンや麺など、粉を使った主食を好んで食べる)、「濃食」(加工食品や味を濃くしないと満足しない)の漢字が当てられている。

 家族で食卓を囲む一家団欒などの習慣が薄れてきた一方で、仕事や生活の都合上、一人で食事をする機会が増えている。また、食事スタイルも多様化し、外食、中食(なかしょくと読む。できあがった惣菜を家庭で食べる食事をいう)、レトルト・冷凍食品、インスタント食品などがある。いずれも、ファストフード店、ファミリーレストランやコンビニエンスストア等で、お金を出しさえすれば、手軽に、便利に手に入れることができる。

 さらに、現代の「食」の状況に「ほうしょく」もあり、「豊食」「飽食」「放食」「崩食」という漢字が当てられている。

 時々、小生もコンビニ弁当を食べるが、おかずでは、野菜は少なく、タンパク質、油モノが多い。味は濃いめで、調味料も多い感じである。主食の米はきらきら光って、容器にはくっつかない。裏の表示内容を読むと、ずいぶんと添加物が記入されている。福岡県のある養豚農家が、豚のえさにコンビニで売れ残った賞味期限の切れた弁当やおにぎりを与えたら、生まれた子が奇形や虚弱体質で育たないことがあったといわれている。

 ちなみに、コンビニで2品を買ってみた。“おかかおにぎり”の原材料名は、塩飯、“おかか煮”、海苔、調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン、増粘多糖類と記されている。ミックスサンドでは、パン、食材のほか、乳化剤、調味料(アミノ酸等)、糊料(アルギン酸エステル、増粘多糖類)、クチナシ色素、酸化防止剤(VC)、カロチロイド色素、酸味料、香辛料、発色剤(亜硝酸Na)、乳酸Ca、pH調整剤、グリシンが記されている。あまりに多い食品添加物に不安になる。日本人対象の、長期にわたる壮大な人体実験か。

 国内自給率カロリーベースで40%の「ほうしょく」の時代に、「こしょく」が進み、カロリー計算、栄養のバランスや塩分制限の難しい、食品添加物の多い食事を毎日とらざるを得ない事情に、医師はどのような食事指導を行えば良いのだろうか。悩み多い問題である。

(環境対策委員・山本昭郎)

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