シリーズ 環境問題を考える114
大規模低線量被曝影響調査の実施中!
一年近くも経て、ようやく政府は放射性物質汚染地域を、1. 帰還困難区域、2. 居住制限区域、3. 避難指示解除準備区域の三つに分け、住民の帰郷事業を始めようとしています。しかしその区域分けの基準は、1. 50mSv/年以上、2. 20〜50mSv/年、3. 20mSv/年以下というものなのです。
日本の法律では一般人の放射線被曝許容限度は、1mSv/年以下と定められているはずなのですが…。
これは最も汚染度の低い3. の地域でも、放射線管理区域での被曝限度(1・3mSv/3カ月=5・2mSv/年)すら超える線量となる可能性が高いことを示しているのです。
本来この区域には必要のない一般人は入ることは許されず、入った方は外部被曝線量の測定を義務付けられており、飲食などもできません。でも数十万人以上がこのような汚染域で、日常生活を強いられていたのが現実なのです。
すでに高度汚染地域は、たとえ街並みや自然環境の破壊を伴う程の“除染”を行おうとも、政府の“目標”である被曝線量1mSv/年の実現は不可能でしょう。
政府は科学的には不可能で実効が期待できない、“除染”を喧伝し、安全宣言を急ぎ“法に反する放射線汚染地域への帰郷事業”を進めようとしているのではないでしょうか?
もっとも100mSv以下の低線量被曝による生体への影響には、相反する諸説があり(しきい値あり・LNT仮説・バイスタンダー効果・適応応答=ホルミシス効果)、この程度の被曝線量では有意な影響は出ないとする意見もあります。
しかし今回の事故における低線量被曝者の数は、きわめて多いと思われ今後が憂慮されます。(一時は首都圏以遠まで死の灰が飛来しているのです! 僅かのホットパーティクルの体内への取り込みが深刻な影響を生体に与える可能性は否定できないでしょう)
長期持続極小線量(特に内部)被曝のデータなど殆どありません。数年先の事は誰にも解らないのです。解らないのならば最悪を考えて対処すべきであり、これは災害対策の常識です!
後悔は決して先に立たないのです!!
現政府は今後も帰郷事業を進めていくことでしょう。
もう一度言います。これは法治国家であるはずの日本が自ら法を犯し、政府・官僚・東電主導で低線量被曝の人体実験をしようとしているに等しいのです。
ナチスドイツによる人体実験を連合国が裁いた、10項目からなるニュルンベルクコードという基準があります。詳細は省きますが、今回の日本政府の帰郷事業は、この多くの項目に反するのは確実でしょう。
命を助けるのが仕事の医師たる我々は、決してこのような愚行を許してはなりません!!br />
(環境対策委員長・武田信英)