シリーズ 環境問題を考える111
除染≒拡散!?
近頃、日本の各種マスコミも一般市民も除染、除染とはやし立てている。
このせいだろう、国民に対し良い格好をしたい日本政府は、放射性物質による土壌汚染の除染目標を1?Sv/年という非現実的で厳しい設定にした。
これに対して原発推進団体であるIAEA(原発村役場または推進教総本山と呼ぶ人もあり)は、“野心的な目標”と皮肉っぽい論評を揚げ、過剰な除染に否定的な考えを示した。今後も原子力利用を続けたいがために、婉曲的に途方もない費用を要する過剰な除染=無駄なことはするなといっているのだろう。
その厳しい設定に対し、多くの食品の放射線量の暫定基準値は500Bq/?としている。
これは諸外国は当然、チェルノブイリ事故のあったウクライナやベラルーシに比べても異常に甘い設定なのだ(食物による内部被曝は、自然に減衰するまでは甘んじて受け入れろといっているに等しい!)。
この温度差は何に起因するのだろうか?
まさか復興利権で、中央省庁と政治家の思惑が一致した結果なのでは…とすれば許しがたいことである。
除染の多くは土木事業となるため利権誘導ができる。また食物よりの内部被曝管理には利権は期待できない、などとでも思っているのだろうか?
除染が利権の温床になることは絶対に許されない!
これは“コンクリートから人へ”という現与党の公約に真っ向から反するものなのだ!!
さて除染したといっても放射性物質が消え去る訳ではない。場所や形態を変えて薄まり拡散(場所によっては濃縮)するにすぎない。放射能をなくする技術など、人類は持ち合わせていないのだ。
もちろん放射線感受性が高いとされる若年者の被曝を軽減する目的で、学校・保育所・通学路・公園などの局所線量を下げるための除染は行われなければならない。しかし、すでに屋根・外壁・土壌などに固着した、微細な放射性物質(ホットパーティクル)を取り去るのは至難の技であり、複数回の高圧洗浄器使用等ではほとんど線量は低下しなかったとの報告がされている。また山林・農地など全ての土壌除染は事実上不可能である。
よって原発近傍やホットベルト・スポットとされる高濃度汚染域は、町並みの破壊や自然環境の破壊を伴うような除染をしても、政府の目標値が達成できるとは到底思えない。
すでに大規模除染には費用に見合う効果は期待できないのである。
また除染で発生する汚染物質は、最終処分地はおろか中間保存場所すら決定されていない。保管・処分を受け入れる自治体などあるわけがない。
無念だが今後は、除染にかかる経費や効果を科学的に厳密にシミュレーションし、総合的な被害低減に望まねばなるまい。
ほぼ安全域に居住する者の身勝手な意見で申し訳ないが、これ以上の放射性物質の拡散を防ぐためには、事故原発近傍に処理場を作るほかなさそうである。
現在の法律を遵守するならば、少なくとも数万人の人々が故郷を失わざるを得ないだろう。政府は数年で帰れるようないい振りだが、物理科学的には困難と思われる、早期の帰郷を唱え、叶いそうもない夢を見せてはいけないだろう(ようやく高線量域では帰宅困難地域を設定しようとしているようだが、低線量域は帰郷を断行するだろう…)。
低線量持続被曝が人体に与える影響のLNT仮説が真実でないことを祈るばかりである。
今となっては遅いのかも知れないが、本当に除染すべきなのは推進派政治家・東電関係者・御用学者達だったのだ!!
(環境対策委員長・武田信英)