シリーズ 環境問題を考える(119)  PDF

シリーズ 環境問題を考える(119)

やっぱり気になるリニアがもたらす環境破壊

 2020年の東京オリンピックに続き、リニア建設、と何十年か前を思い出される大型プロジェクトの波が日本列島に押し寄せている。大手シンクタンクではリニア開業の経済効果を10兆円以上と見積もっており、沿線地域では早くもリニア効果に対する期待が高まっている。ところが問題なのは9兆円を超えるといわれる莫大な建設費用の処理である。民間のJR東海1社がこれを負担し、たとえ採算が取れなくとも我々の懐には影響ないと思っている国民も多いと思うが、東電に対する税金の使われ方を見ると結局大型プロジェクトのつけはすべて国民に回ってくるのがこの国だ。

 そしてその路線のほとんどがトンネル工事であるため、環境破壊の問題が心配されるがそれは山梨の実験線の周辺ですでに“水枯れ”という深刻な環境問題が発生している。初めて報告されたのは、99年の大月市猿橋町朝日小沢地区。住民の簡易水道の水源である沢が枯れた。実験線の延伸工事が08年に始まると、翌年、笛吹市御坂町の水源である一級河川の天川(てがわ)が、さらに11年夏には上野原市秋山の無生野地区の棚の入沢が枯れた。こうした水枯れ問題は、実はリニアに限らず、どんなトンネル工事でも水脈を断ち切れば必ず起きるもの。JR東海は各地での住民説明会において「水源を保全する工法を施行する」と説明しているが、すでに発生している以上、「あり得ない話だ」と憤る人は多い。だが、リニア計画の特殊性は、東京〜大阪間約438?の8割以上でトンネルを掘る。つまり、連続した広範囲での水枯れが予想されるのだ。水枯れだけでなく、リニア中央新幹線には、周辺地域とのさまざまな問題が懸念されている。

 トンネル工事で発生する大量の残土、山梨県ではこれは宅地に造成するという名目で県から40億円もつぎ込まれているとのこと。「排土はもろいので住宅を建てると液状化などの危険がある」と指摘している学者もいる。また県費を投じて住宅団地造成にリニア残土が使われているという意味がわからない。残土を引き受けているのでJR東海から処理費を受け取る、団地造成予算はその分だけ減額できるはずだが、大きな矛盾だ。

 地元新聞紙とテレビ、そして地域の集まりが主たる情報源で、日常は生活・仕事に忙しい国民が、生活が向上しますと叫びながら流れてくるカネと太鼓でイケイケドンドンに同調するのは仕方ないことかもしれない。原発誘致が進んだ地域も同じような状況にあった、現在でも同様なのだと感じる。その結果がもたらしたものは、原発と同じで、今の、これからの、日本の自然、地域を滅ぼしつつあるように感じている。

(京都府歯科保険医協会 理事・平田高士)

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