サービス付き高齢者住宅に集約/高齢者住まい法等改正案
政府は「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会へ提出した。複数ある高齢者向け住宅制度を整理し、都道府県知事への登録制度「サービス付き高齢者向け住宅」に集約することが主な目的だ。
高齢者が対象の賃貸住宅は現在、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」による家賃債務保証制度として、高齢者の入居を推奨する「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」(2011年2月現在、約8万2000戸)と、高齢者の入居が前提の「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」(同、約4万7000戸)の2つに大きく分けられる。
このうちバリアフリー化や緊急時対応サービスなど、戸数、規模、構造、設備などの基準を満たせば、整備や家賃減額のための費用が助成される「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」(10年3月末時点、約3万9000戸)がある。さらに、近年は生活支援サービスなどを提供する「サービス付き高専賃」も数を増やしている。
一方で、高円賃に高齢の居住者を確保する義務がないことや、サービス付き高専賃に対して行政が指導・監督を行えないなど、現行制度の問題点を指摘する声もあった。
改正法案では「高齢者住まい法」に国土交通省と厚生労働省共管の新登録制度を創設。現行の高齢者向け賃貸住宅を「サービス付き高齢者向け住宅」に集約し、基準を満たした事業所には▽施設建設・改築の補助▽住宅金融支援機構の融資要件の緩和▽税制上の優遇措置―などを講じる。不適切な運営実態があった場合は登録を取り消すなど、自治体の指導・監督による登録基準の順守も厳格に求める。前払い家賃などの内訳開示と保全措置も義務付ける。
有料老人ホームも登録できる仕組みとする。既存の有老ホームについては、入居状態を維持したままの改築は難しいため、新制度へ登録しても助成は受けにくいが、新規の有老ホームの場合は基準を満たせば建築費用の補助などが受けられる。新制度に登録した場合は、老人福祉法で義務付けられている有老ホームとしての届け出は不要とし、事務手続きを軽減する。
●助成開始は年末から?
国交省は10年5月にまとめた成長戦略の中で、現在は0.9%にとどまっている全高齢者数に対する高齢者住宅の定員数を、20年までに3−5%まで伸ばす方針を打ち出しており、新制度で高齢者住宅を急拡大させたい考えだ。
一方で、国会審議の遅れなどで改正案可決が遅れれば、公布や省令発出のほか、都道府県知事への登録制度の開始も遅れる。助成開始は年末から年明けになるとの見方もあり、国交省は選定を先行して行うかどうかも含めて、法案成立が遅れることも想定した対応策を検討している。(2/18MEDIFAXより)