コミュニケーション委員会を開催
京都府保健医療計画について意見交換
第1回コミュニケーション委員会のもよう
協会は11月8日、08年度第1回コミュニケーション委員会を地区から15人、理事者5人の出席で開催した。委員会は岡田代議員会議長の司会で進められた。今回のテーマは「京都府保健医療計画」について。冒頭、岡田議長は、医療制度改革関連法が成立し、4月に医療費抑制を目論んだ後期高齢者医療制度が始まったが、悪評が相次いでいる。今回は京都府保健医療計画をテーマに忌憚ない意見を伺いたい、と挨拶した。続いて関理事長が、後期高齢者医療制度について、協会は2年前から問題点を指摘し、広域連合議会や議員に向けて働きかけを行ってきた。そして10月3日、京都市会において政令市としては初めて「廃止」を求める意見書が可決された。後期高齢者医療制度は廃止すべきであり、我々は今後も制度廃止に向けて全力で活動を続けていく、と挨拶した。その後、垣田副理事長が情報提供を行い、意見交換を行った。
地区からの発言では、一連の医療費適正化計画の中で在宅への誘導がなされていることについて、すべては医療費抑制を目的としており、言語道断である。そもそも高齢化が進み、核家族が増加している中で、在宅での看取りを希望する人は本当に多いのか。現場をよく踏まえた上で、「医療費適正化」ではなく、「医療の適正化」が必要であるとの意見が出された。
在宅医療に携わる中で、地区からは、末期がん患者を立て続けに診ることや、周囲には呼吸器を標榜する医師がおらず、ALSやバイパスなど月に12人もの在宅患者を抱えることもある。すでにバーンアウト寸前で、受け入れ患者を減らしているという声もあった。さらに、病院側へのリハビリ要請や、訪問看護ステーションへの看護要請もなかなか受け入れてもらえない。その原因は人材不足であり、医療従事者らの疲弊は著しい、との窮状も述べられた。
北部からは、熱心に在宅に携わる医師もいるが、医師会としてどのように地域連携していくかは現在のところ不透明である。範囲が広く、訪問診療の行き帰りだけで2時間近く費やしてしまうこともある、と説明した。
また地区から、診療所として地域連携にかかわる書類について、情報提供料としての点数は取れないのか、といった質問を受け、協会から、患者への退院後の説明や連携病院への情報提供は地域連携診療計画退院時指導料として600点算定できるが、それ以外は今のところ取れない、と説明した。
左京と右京からは具体的な地域連携の取り組みが紹介された。左京では、在宅で診てほしいという要望があれば、それに答えるべきであるというスタンスを取り、そういった退院患者がいれば、メーリングリストで流して手あげ方式で主治医と副主治医を決定している。
右京では、在宅に携わる医師5人が集まり、土曜・日曜のみ当番制で往診に対応している。1週間毎に登録患者のカルテの要約と看家の地図の入ったファイル、携帯電話を持ち回りし、患者から要請のあった場合には往診料のみ算定している。この取り組みにより、担当の日以外は安心していられるようになったという。
しかし、問題点も挙げられた。左京から主治医紹介システムは、本来かかりつけ医を持っている患者は対象になりにくいほか、大病院志向が強く、診療所の医師との信頼関係の構築が難しいケースもある。また、伏見からは同地区でも紹介システム導入を試みたことがあるが、医師側も休みたい日が重なってしまい、1人の医師に負担が集中してしまったと述べた。
また右京のようにグループで対応している場合、在宅療養指導管理料の算定が課題となる。他地区から、以前ケアマネから在宅療養管理の依頼を受け、診察し、在宅療養指導管理料を算定したところ、国保連合会から「他にも取っている医療機関があり、当事者同士でどちらが算定するか相談してほしい」と言われ、非常に困った。そういった金銭的な利害関係が生じる可能性があり、円滑にいかないこともある、との意見があった。
今後の地域連携機能を十分に機能させる一つの展望として、在宅を専門とする診療所に話題は及んだ。地区から、今後、24時間対応をするためには、開業医数人がグループを作り、病院と外来を専門とする開業医の中間的な役割としての在宅を専門とする診療所を経営する形ができるかもしれない。一方では、緩和ケアは在宅に戻った時ではなく、手術が終わった時点で始まっている。余命1週間の状態で在宅に戻されても、患者や家族との信頼関係を築く前に亡くなってしまうケースも珍しくない、という意見や、ハイテク在宅化が進み、あたかもハイテク在宅が理想であるかのように言われている。医師にとっては在宅を受け入れるハードルが高くなっており、医療のあり方自体が問われている、との意見があった。協会から、医療を受ける患者側の意識やニーズも多様化してきている。協会として介護と医療をリンクさせた取り組みを考えていかなくてはならない、と述べた。
最後に垣田副理事長から、医療連携では急性期・回復期・維持期といったピラミッド型の構想が描かれており、今後それぞれの病院がどのように機能分化していくかが大きな分岐点である。また、専門分野に特化した医療機関が増えていくことが予想されるが、専門診療所と一般開業医の役割についても検討していく。今後ともご意見を伺いながら医療のあるべき方向性を追求していきたい、と締めくくった。
【京都保険医新聞第2669号_2008年12月15日_5面】