グローバリゼーションと医療(3)/野村 拓
グローバリゼーションと帝国主義―医療の視点で―
「グローバリズム」「グローバリゼーション」と「帝国主義」とは、言葉の上では類似点、共通点が多い。1898年の米西戦争(アメリカ・スペイン戦争)をグローバリゼーションの起源とした本(図1)(Thomas Schoonover:Uncle Sam’s War of 1898 and the Origins of Globalization. 2003. Univ. Press of Kentucky.)があるが、この本によれば両者はほぼイコールである。
また、同じく1898年の戦争をキューバ革命史の視点でとらえた本(図2)(Katherine Hirschfeld:Health, Politics, and Revolution in Cuba since 1898. 2007. Transaction Pub.)は、仮訳すれば『保健、政策、そしてキューバにおける1898年以来の革命』となるが、この本ではグローバリゼーションを「21世紀の帝国主義」と位置づけている。
しかし、イスラム・サイドからの見方として「聖戦的」グローバリズム(Jihardist Globalism)と「帝国主義的」グローバリズム(Imperial Globalism)とを対抗関係としてとらえた本(Manfred B.Steger:The Rise of the Global Imaginary.2008.Oxford Univ.Press.)も出されている。これはプロテスタンティズムを「資本主義の精神」としてとらえたマックス・ヴェーバー的なものと、資本主義的拡大再生産を真っ向から否定するイスラム原理主義との対立図ということになる。
これは、最大の悪は貧者に金を貸して利息をとること、とのイスラムの教えと、勤勉と節約による拡大再生産の歴史的積み重ねがやがて「経済の軍事化」をもたらし、山羊の乳となつめ椰子の実でつつましく単純再生産的に暮らす砂漠の民の生活圏に、戦車隊を走らせた国が持つ妙な使命感との対抗関係ともいえる。
20世紀末から『地球のバイタルサイン』という本が出されるようになった。地球は重体なのだから、地球に優しく、地球の民に優しく、という課題はグローバリズムに含まれるのだろうか。含まれなければ「ただの帝国主義」である。