カネミ油症被害者の現状をきく 保団連 長崎県五島を視察
被害者の方々から話を聞く飯田理事ら
09年度保団連公害視察会が11月22〜23日、カネミ油症事件をテーマに長崎県五島市で開催された。全国から医師・歯科医師ら31人、京都協会からは、飯田哲夫理事と事務局が参加した。
1日目は学習会の後に「カネミ油症被害者の救済を求める」アピールを採択。2日目は、多くの被害者を出した奈留島に渡り被害者の方々約20人と交流。健康被害の実相や不十分な救済支援策の現状について、お一人お一人から話を伺った。また、被害者の方々からの要望に応えて歯科検診も行った。今後は、各協会とともに恒久救済を求める請願署名に取り組む。
今からでもできることを
「40年間も放っておいて、今頃になってというのが率直な思いです。でも全国のお医者さんの集まりから来てもらえ、今後何か私たちを救ってくださる動きが始まるかも知れないと期待して集まりました」(交流会開会挨拶より)
よく知られているように、カネミ油症事件は、68年にカネミ倉庫製造の食用油に含まれていたPCB・ダイオキシンによる大規模食中毒事件である。そしてほとんど知られていないが、根本的な治療法もなく、生活を脅かし続ける多様な病苦が今も持続し、社会的、経済的な救済もほとんどないままに長い年月が経ち、今新たに裁判が争われている。
現在までに、カネミ油症被害と認定された人は全国で1927人(長崎県1444人、五島市667人)で、既に3割近い人が亡くなられている。そして現在なお未認定が長崎県3478人、五島市2323人もいる。
言うまでもなく根本的な問題は、次世代に対する影響も大きいダイオキシンが引き起こす問題の根本的な解決法がなく、(一人の人においても、世代を超えて)「病気のデパート」といわれるほどに多様な健康被害が続いていることである。
次にカネミ油症訴訟では、国がその責任を認めず、またカネミ倉庫に対し強制執行義務のない判決が出されているため、現在なお206億円の賠償金の未払いがあり、今後も支払われる可能性がこのままではなく、更に長い年月を経た後の認定基準の変更などにともなう、新たな認定患者の増加はみられるものの、新たに認定されたとしても、保障されるのは今後の医療費だけといわれている(様々な障害のため生活を困窮に追いやった40年にも及ぶ多額の医療費は保証されない、あるいはそのために必要な医療を受けられなかった人々も何ら救済されない)。
またカネミ食用油を家族、なかんずく子どもに食べさせてしまった、という罪の意識のある女性が多いこと、あるいは地域に差別や偏見が生まれてしまったこと、更には障害を背負わされたがゆえに、過疎(五島市の人口は9万余から半減)、高齢化と高齢者独居(より必要となる介護費用の保障はない)、そして貧困などの問題が、より一層浮き彫りになると思われるなど、なお多くの問題と困難があり、医療に携わるものとして、考えなければならないことを多く含んでいると言えるであろう。
(環境対策 飯田哲夫)