オンライン請求で声明 政府に義務化撤回求める
保険医協会は11月14日、オンライン請求義務化の撤回をあらためて求める声明を発表し、麻生首相をはじめ全閣僚に送付した。これは、政府が11日に、オンライン請求は「個別の医療機関の判断に委ねることは適当でない」との答弁書を出し、“完全義務化”にこだわる姿勢を示したことに対するもの。声明は以下の通り。
声明 政府は保険医の請求権を踏みにじる
レセプトのオンライン請求義務化を撤回せよ
京都府保険医協会理事長 関 浩
政府は08年11月11日、医療機関が審査支払機関に提出する診療報酬請求書(通称“レセプト”)について、「全て医療機関等がオンライン請求を行うことによって、初めて医療保険事務全体の効率化を図ることが可能となるので、個別の医療機関等の判断に委ねることは適当でない」との答弁書を発出し、あくまでも“完全義務化”に拘る姿勢を示した。
また、「完全義務化によって、診療の継続が不可能となる医療機関が生じ、地域医療の崩壊、ひいては国民不安の増大を招くことが現実となりつつある」との指摘に対して、(1)義務化の施行までの間に十分な準備期間を設けている、(2)レセコンを使用していない小規模医療機関では、義務化後も一定の猶予期間を設けている、(3)事務代行者を介してのオンライン請求を認めている−の3点を理由に、「すべての医療機関がオンライン請求の義務化に対応することは十分に可能」とした。しかし、これは実態を無視した暴論である。
答弁書によると、全国でレセコンを使用していない医科診療所は8万8628施設中1万2726施設(14・4%)、歯科診療所は6万5360施設中1万4146施設(25・6%)となっている(支払基金・08年5月分集計)。一方、オンライン請求の前提となる「レセプト電算処理システム」の普及状況は、医科診療所で29・6%に留まり、歯科診療所では普及率さえも調査できない状況である(支払基金・08年8月分集計)。レセコンを導入しているからといって、それが「レセプト電算処理」「オンライン請求」等のシステムに対応可能か否かは別の話であり、対応不可能の場合は、保険診療を続けるために200万円前後の買い替え費用が強要される。低診療報酬に喘ぐ開業医にとって、費用負担の強要は暴挙である。小規模医療機関の新規導入であれば尚更の事である。最長2年の猶予期間を設けたとしても、廃院させることを前提とした施策であり、少数とはいえその医師を必要として医療を受けている患者の「療養の給付」の権利保障も含め、民主主義国家の施策といえるのか。我々は決して受け入れることはできない。
オンライン請求を先行導入している韓国でも義務化されていない。政府は何故、少数の例外も認めず、医療界に対して高圧的に強要するのか。件数として極少ない手書き請求を残しても、政府のいう「効率化」は図られるではないか。
NTTデータとNECはオンライン請求ビジネスで協業し、今後3年で30%のシェアを獲得し60億円の売り上げを目指すという。これら医療界から隈なく金を吸い取ろうとする通信業界の横暴に加担する一方で、是が非でも全国民の診療情報の集約を成し遂げようとする官僚の盲進を擁護し、頑なに義務化に固執する政府の態度は、即刻改めるべきである。そして、これは来るべき総選挙での我々の注目点ともなろう。
あらためて我々保険医は、政府に対して、オンライン請求の義務化撤回を要求する。
以上
2008年11月14日
【京都保険医新聞第2667・2668号_2008年12月1・8日_1面】