イレッサ訴訟、AZに賠償命令/大阪地裁、 国の責任は否定  PDF

イレッサ訴訟、AZに賠償命令/大阪地裁、 国の責任は否定

 抗がん剤「イレッサ」の副作用をめぐり患者・遺族11人が国とアストラゼネカ(AZ)に対し総額1億450万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2月25日、大阪地裁であった。承認当時の添付文書は間質性肺炎への注意喚起が不十分だったとして、AZに総額6050万円の支払いを命じた。損害賠償は、ドクターレターが発出され添付文書の警告欄に間質性肺炎が記載された2002年10月15日より前に処方された患者が対象で、それ以降のケースでは企業の責任は認めなかった。一方、国の監督責任は認めず、原告側の請求を棄却した。

 判決ではAZに対して、国内臨床試験と海外の副作用報告などから「イレッサの承認当時、死に至る可能性がある間質性肺炎の危険性を認識できた可能性があった」とした。焦点となっている添付文書の記載については、厚生労働省が通達で「重要と考えられる事項を前の方に配列すること」と指導している点を指摘。また、発売当初から警告欄に間質性肺炎を記載することについても「支障はなかった」とした。

 その上で「少なくとも第1版添付文書では重大な副作用欄の最初に間質性肺炎を記載すべきであり、間質性肺炎が致死的な転帰をたどる可能性があったことを警告欄に記載し注意喚起すべきだった」と指摘。「抗がん剤が通常有すべき安全性を欠いていたと言わざるを得ず、製造物責任法上の指示・警告上の欠陥があった」とAZの責任を認めた。ただ、イレッサの有用性については承認時から現在に至るまで認めた。

 一方、国の責任については、承認当時からイレッサの有用性は認められることや、国の安全対策が著しく合理性を欠くとは言えないことなどから「国家賠償法上の違法性はない」として原告の訴えを退けた。重大な副作用欄に記載しただけでは間質性肺炎の危険性が医療現場で警戒されず、広く用いられる危険性については「高度の蓋然性をもって認識できなかった」とした。また、「AZが審査過程で間質性肺炎を添付文書に記載することに消極的な態度を示していた」とも指摘した。

 その上で「当時の医学的・薬学的知見では、厚労大臣が取った措置は一応の合理性を有し、許容限度を逸脱して著しく合理性を欠くものとは認められない」「使用限定を付さなかったことや、全例調査を実施しなかったことも著しく合理性を欠くとは言えない」として国の責任は認めなかった。(2/28MEDIFAXより)

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