イレッサ訴訟、国にも賠償責任/東京地裁  PDF

イレッサ訴訟、国にも賠償責任/東京地裁

 アストラゼネカ(AZ)の抗がん剤「イレッサ」の副作用で死亡した患者3人の遺族が国とAZを相手取り計7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3月23日、東京地裁であった。松並重雄裁判長は、国に対して監督責任を、AZに対しては製造物責任法(PL法)上の責任を認め、計1760万円の支払いを命じた。

 損害賠償を認めたのは、ドクターレターが発出され添付文書の警告欄に間質性肺炎が記載された2002年10月15日より前の処方例。2月25日の大阪地裁判決では国の責任を認めなかったが、東京地裁では一転して国敗訴の判決となった。

 訴訟ではイレッサの初版添付文書での記載が焦点になった。東京地裁は判決要旨の中で「イレッサの薬剤性間質性肺炎が致死的であることは添付文書に記載がない限り、一般の医師等には容易には認識できなかった」「下痢、皮膚、肝機能の副作用の後に間質性肺炎が記載されており、重篤度が誤解される可能性もあった」と指摘。その上で「間質性肺炎を添付文書の警告欄に記載するか、他の副作用よりも前の方に記載し、かつ致死的となる可能性があることを記載するよう行政指導すべきだった」としている。

 国の監督責任については「添付文書に安全性確保のために必要な記載がされているか否かを審査し、これが欠けているときには記載するよう指導する権限を行使すべき責務がある」と指摘。さらに、「必要な記載が欠けているにもかかわらず、権限を行使しなかったときには、他に安全性確保のための十分な措置が講じられたなどの特段の事情がない限り、権限の不行使はその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」とし、国家賠償法上違法との判断を示した。

 AZに対しては、イレッサの有効性と有用性については肯定したものの、大阪地裁判決と同様、初版添付文書がPL法上の「指示・警告上の欠陥」に当たるとの判断を示した。これらを踏まえて判決は、「初版添付文書で致死的となる可能性が記載されていれば、イレッサの服用を継続することはなく、間質性肺炎の発症ないし増悪による死亡はなかったものと認められる」と結論付けた。(3/24MEDIFAXより)

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