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TPP アメリカ発、第3の構造改革―安倍新政権の論点
TPP アメリカ発、第3の構造改革―安倍新政権の論点
萩原伸次郎著、かもがわ出版、定価本体900円+税

国の主権尊重しないTPPにNO!!

 京都府保険医協会はこれまでTPP参加に対し、国民皆保険制度が形骸化されるとしてTPP参加反対を訴えてきた。TPPでは、関税障壁のみならず非関税障壁の撤廃も行われる。このことで、国民の健康・命を守るために医療が存在するにもかかわらず、薬価決定のシステムの自由化によって薬価の高騰がもたらされたり、混合診療の解禁をはじめとした規制緩和が断行される危険性を孕んでいる。こうした動きを受け、協会は医療分野だけでなく、さまざまな団体と共にネットワークを組み、TPP参加反対の運動を行ってきた。6月30日には「TPP参加反対京都府民集会2013」を大谷ホールで開催した。

 今回紹介する萩原伸次郎氏の『TPP アメリカ発、第3の構造改革 安倍新政権の論点?』は、安倍首相が決断した日本のTPPへの参加の意味するところは、新自由主義的構造改革として展開されてきた橋本、小泉構造改革に次ぐ「第3の構造改革」と位置付け、その危険性を述べている。

 TPPは、協定案ができるまで交渉は秘密裏に行われ、協定が成立しても、どのように交渉が行われてきたかについては一定期間公開しないという非民主的な過程で行わる。このような中、本著は第一章から第五章で構成され、TPPがどのようなものなのか、どのような経過、歴史で生まれてきたのかを他の同様の協定をもとにわかりやすく書かれ、その問題点やこれからどう対抗していけばいいのかを述べている。

 著者は本著の最後に、国際貿易、貿易自由化のやりかたの大切さを訴えている。これまで進められてきた新自由主義的構造改革をさらに推し進める「第3の構造改革」としてのTPPではなく、それぞれの国の形というものを考えながら、その国の自主権を尊重しながら、貿易は進められ、お互いが貿易自由化の恩恵を受けるシステムを創造することが大切であると締めくくっている。

 ぜひこの本をご一読いただき、TPPの認識を深め、さらなるTPP参加反対への運動につなげていただければと思う。(西陣・渡邉賢治)

 

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