なんでも書きましょう広場
主よ、我らに永遠の安息を!
フォーレ作曲の「レクィエム」を聞く。心和む静ひつの一時である。しかし、妻曰く「いびきがうるさかったわ!」と夜間は安息にほど遠い状況である。
最近、右拇指の先端がしびれ、レ線撮影で右C5/6椎間孔の狭小も見え、牽引療法で改善し、神経根症かとまだMRIも撮っていない。胃下垂のため腹臥位での睡眠が多かったが、頸椎の後屈回避に枕を高めに背臥位をとるため舌根沈下をきたしてオルガン吹奏となる。歩行中など、痺れが拡大すると、2本のステッキを左手に集め右手で下顎を支えて回復を待つ。
また、知り合いからセカンドオピニオンを求められたが、診れば頸髄症で大学の専門医を紹介して無事後方除圧術を終えた。親の死に目に会えずとも、手術延期で悪化すれば後悔から家族間紛争のもとになる、予定日に受ける方がよいと比較衡量のうえアドバイスした。
日本医療安全調査機構から、平成22年度に評価が終了し公開の同意があった事例の報告書概要版で、頸椎術後に死亡した60歳代女性の事例がある。関節リウマチでステロイド投薬中であり、既往歴に高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、高尿酸血症があり、2年前に腰部脊柱管狭窄症の手術を受けていた。今回、頸椎椎弓形成術を受け、術後3日目頃より下痢がみられ、5日目には頻回となり、6日目13時頃に38℃台の発熱、15時頃に呼吸困難感を訴え、16時28分急変、救急措置のうえ17時43分死亡確認された。解剖所見では、手術局所に著変なく、副腎が半量に萎縮し、血液髄液培養で大腸菌などが検出され、敗血症が死因であった。
ASAリスク評価は2(軽度〜中程度の系統的な障害)で、術前・術後の診療に特段の落ち度はないものの、「こんな結果になると予めわかっておれば、そんな併発症の危険な手術は今回受けさせなかったのに!」と遺族に再び悔いを生じて争いとなる危険も皆無ではない。15人の各派委員で公正に協議されており、全ての併発症死亡事例に解剖はじめこれ程に検討されれば原因も帰責も明瞭になって無駄な争いは生じるまいが、予算もあり限定的である。
明日は我が身の還暦を過ごし、夕食後は眠く、坐骨神経痛やら頸椎症も始まり、体力・脳力の低下を意識する。「自分もあちこち壊れてその内あの世か」との思いを新たに、ならばまだまだ元気な内に、やり残した勉強・執筆やら文芸鑑賞やら世界旅行など、大いに励まねばなるまい。後者は政変のない平和な時が重要で、辛くも1年前の年末年始、カイロ国立博物館に、子孫らに3千年の安眠を妨げられたラムセス2世はじめエジプト王族のミイラから、「永遠の生命を!永遠の安息を!」と嘆きの歌が聞こえていた。
(宇治久世・宇田憲司)