がん患者の明細書が共通課題/義務化で各病院
4月1日に病院で始まった明細書の発行義務化に対して、全国でさまざまな動きが出てきている。特に、がん患者の明細書の在り方が、病院現場での共通課題として浮上してきており、対応に苦慮する声が高まっている。
大阪府の社会医療法人生長会の府中病院(380床)は、4月1日の外来平均患者数が842人だった。自動入金機に明細書の機能が付いていないほか、窓口会計のレセプトコンピューターにも明細書の機能が付いていないため、明細書発行の“免除組”となる。しかし、同院では、窓口会計のレセコンシステムに明細書の機能を追加させることを決定。すでに業者に発注している。同院は「決して安くはないが、社会医療法人として公益性の高い病院を目指している。明細書が欲しいとのオーダーがあった時に応えられる病院でありたい」としている。
今後、明細書発行で問題視しているのが、がんの告知の問題。診療部門では「府中病院のような地域の総合病院の場合は、個々の患者の状況に応じて未告知としている患者も複数いる。その場合、明細書を通じて患者自身ががんを知ってしまうと、医師と患者の信頼関係を損なう問題をはらんでいる」と指摘している。
茨城県の財団法人筑波メディカルセンター病院(409床)も、がん告知の問題を抱えている。同院では、4月1日、外来患者数500人に明細書を発行した。明細書を不要としたのが20人だけで、大部分の患者が明細書を受け取った。不要とした理由は、高頻度で通院しなければならない疾患であることが最も多いとしている。
同院の外来会計は、窓口会計だけで行われている。しかし、患者の待ち時間短縮のため、2010年秋にも自動入金機を導入する計画で、明細書機能付きの機種を選別している。同院の医事外来課は「明細書発行で最も大きな課題は、がんなどの告知の問題。明細書に悪性腫瘍管理料というように印字されてしまう」とし「早急に外来検討会で、病院としての対応策を協議していきたい」としている。
熊本県の済生会熊本病院(400床)は、来秋の電子カルテの導入に併せて、自動入金機を明細書機能付きの機種に変更する方針だ。現在の明細書機能が付いていない自動入金機が1台600万円で、かなりの投資になる見通しだ。副島秀久院長は「がん告知は、数的には少なくなっているが、患者家族からの依頼で告知せずに治療を行うケースがある。明細書では、病名の印字削除ができても、検査、薬剤から分かってしまう」とし、「明細書の発行の義務付けは、がん治療に対する患者、家族への啓発、理解の促進を医療機関に課したと言えるのではないか」と述べた。
一方、4月1日の外来患者の予約が3700人だった東京大病院(一般1150床、精神60床)では、明細書の申し込みを4件受けた。これまでは、明細書の希望者数は月間10件程度で「明細書発行へのニーズが広がるかどうかは、1カ月程度推移を見てみたい」とし、今後の患者動向を注視していく意向だ。同院では、自動入金機に明細書の機能が付いていない。09年、自動入金機の更新をしたばかりとしている。(4/7MEDIFAXより)