あらためてアスベストを疑え 医療機関に気をつけてほしいこと  PDF

あらためてアスベストを疑え 医療機関に気をつけてほしいこと

 「国のアスベスト(石綿)規制は後手後手にまわり、健康被害をもたらした」と大阪高裁は2013年12月25日、国の責任を認める判決を下した。繊維状の天然鉱物であるアスベストは耐熱、耐火、防音などに優れることから建設資材や電気製品などさまざまな用途で使われてきた。一方で、10〜50年という長い潜伏期間を経て、石綿肺、肺がん、中皮腫などの重篤な疾病を引き起こすことが判明しており、その対策と健康被害救済が課題となっている。協会会員にとっては、医療機関の建材として使用されている可能性と、被害患者に接する場合の両面から関心の高いところであるので、情報をまとめた。

吹付は90年頃まで、全面禁止は06年

 法的規制は、75年に吹き付けアスベストが禁止となるが、アスベスト含有率5%以下のものは適用除外となり、実質的に使用中止となったのは90年頃といわれている。成形板など含有建材が原則禁止となるのは04年10月のこと。製造・輸入・使用等の全面禁止とされたのは06年9月時点である。

建物に使われている箇所はココ

 鉄骨・鉄筋の施設の場合、吹き付け材が多く、吸入するリスクもあるため注意が必要。表面の毛羽立ちや垂れ下がりなど劣化状況によっては対策工事が必要となる。成形板については、飛散の心配はないが、どこに使われているか程度は把握しておきたい。

 木造の日本家屋の場合、まず吹き付け材は使われていない。含有建材があるとすれば成形板で、ポイントは屋根・軒下・外壁・天井・内壁・床・台所・風呂・トイレ―の9カ所。(図参照)

解体工事発注者にも一定の責任

 既存建築物の増改築の場合には、建築基準法に基づき、吹き付けアスベスト等の除去が義務付けられている。また、除去の場合には、大気汚染防止法、建設リサイクル法、廃棄物処理法や労働安全衛生法に基づき、適切な分別解体・処分が義務付けられている。

 また、石綿使用の可能性がある建築物の解体工事は、今後、全国的に増加すると推計されており、飛散防止対策の強化を図るため、大気汚染防止法改正が13年6月21日に公布された(施行は公布の日から起算して1年を超えない範囲内で決められる)。

 改正の概要は、(1)石綿の飛散を伴う解体等工事の実施の届出義務者を工事施工者から発注者に変更し、発注者にも一定の責任を担うことを位置付ける(2)解体等工事の受注者に、石綿使用の有無の事前調査の実施と、発注者への調査結果等の説明を義務付ける(石綿が使用されていないことが明らかなものを除く) (3)都道府県知事等による立入検査の対象に解体等工事に係る建築物等を、報告徴収の対象に解体等工事の発注者又は自主施工者を加える―。

 建物についての相談窓口など、詳しくは京都府の建築物のアスベスト対策ページ(http://www.pref.kyoto.jp/kenchiku/asbestos.html)を参照されたい。

健康被害の掘り起こしを

 アスベストによる疾患は、▽タバコが原因と間違われることが多い▽診断のバラツキ▽潜伏期間が長く本人の自覚も薄い―など医療機関で見逃されるケースもあるとされる。このため建設業などに従事していたか、職歴を確認することがまずは重要となる。

 肺がん・中皮腫・石綿肺・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚の、5疾病いずれかを発症し、国の認定基準を満たせば、石綿が原因の疾病とみなされ、労災補償が受けられる。また、石綿救済法による救済給付もあり、石綿工場の周辺住民など「環境ばく露」や、家族、事業主など労災適用を受けられない人が対象となる。

 なお、12年4月から「石綿疾患労災請求指導料」が創設されている。石綿関連疾患の診断を行った上で問診を行い、業務による石綿ばく露が疑われる場合に労災請求の勧奨を行い、現に労災請求に至り当該個別事案が業務上と判断された場合は450点(5400円)が支払われる。

 協会としても、少しでも患者が労災や救済制度から漏れないようにしたいと考えている。そこで、診断や労災申請など詳しく解説した「NPO法人職業性疾患・疫学リサーチセンター関西支部」の作成したパンフレット「アスベストを疑え!」を本号に同封した。会員におかれてはぜひご参照いただきたい。

医療関係者もアスベスト被害

 医療用ゴム手袋等の再利用のために、アスベストが含まれる粉(タルク)を利用することは、80年代まで一般的に行われていたとされ、このために看護師等が中皮腫を発症した例も報告されている。13年5月までに2例が労災認定されている。

 なお、現在はタルクの製造、使用とも禁止されている。この点に関しても注意されたい。

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