【ICT】患者自身の疾病管理、糖尿病から/どこでもMY病院構想
情報通信技術(ICT)を利活用した医療連携について行政や医療の関係者が議論する「どこでもMYカルテ研究会」が10月20日に東京都内で開かれた。内閣官房情報通信技術(IT)担当室の有倉陽司参事官が政府の「どこでもMY病院」構想の現状について講演し、2014年度開始予定の「個人参加型疾病管理サービス」の対象疾患として、まず糖尿病を検討していることを報告した。
どこでもMY病院構想は、医療機関のみが保持していた医療情報を患者も共有し、患者自身が疾病を管理できる個人参加型疾病管理サービスの提供を目指している。医療情報は電子化し、ICカードや二次元バーコードを通じて提供することを想定する。
有倉氏は「電子化した医療情報提供には疾病情報をフォーマット化することが必要」と指摘し、フォーマット化した糖尿病のデータセットは▽医療機関が提供する臨床データ▽医師からのコメント▽健診センターからの健診データ▽血圧や運動量、食事量など、患者が登録する自己管理データ―などで構成すると説明した。電子版「お薬手帳」との連携も想定している。日本糖尿病学会や日本医師会、日本薬剤師会の関係者らが検討した。
有倉氏は個人参加型疾病管理サービスについて、「患者が自身の健康管理をできるだけではなく、専門医とかかりつけ医を結び付ける手段になる」と期待する。糖尿病から開始する理由については「患者数が多いことや、患者自身による自己管理の効果が出やすい」ことを挙げた。どこでもMY病院構想の工程表では13年度までに、作成したデータセットを全国の医療機関に通知するとしている。高血圧症や腎臓病のデータセットも検討を進めているという。
●被災地や地域連携でICT活用
会合では、東日本大震災の被災地や地域の医療連携でICTを活用する先進事例の報告があった。
亀田総合病院から南相馬市立総合病院に出向している原澤慶太郎氏は、独居高齢者などの患者の血圧のデータを自動転送する3G通信対応の「3G血圧計」の導入例を報告した。3G血圧計を使って患者自身が血圧測定すれば、医師らが患者宅を訪問しなくても血圧値のモニタリングができる。原澤氏は「これまで血圧測定を促していた家族と離散した人もいるが、3G血圧計を導入すれば、そうした人が血圧測定していないこともすぐ分かる」とそのメリットを紹介した。
また、長野県松本市の中核病院に位置付けられる相澤病院の熊井達氏は、地域内の病院、診療所、介護施設の患者情報を時系列に一覧表示できるシステムについて報告した。(10/23MEDIFAXより)