【適用拡大】適用拡大法案の提出手順に問題意識/社保審・医療保険部会
厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大教授)は4月18日、短時間労働者への社会保険適用拡大に伴う医療保険者財政の激変緩和策や、審査支払機関の在り方を議論した。短時間労働者への社会保険適用拡大をめぐっては、医療保険部会での審議前に激変緩和策を盛り込んだ法案が今国会へ提出されたことに問題意識を示す声が相次いだ。
短時間労働者への社会保険適用拡大などを盛り込んだ「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案」では、適用拡大に伴い低賃金の加入者が増え財政負担が大きくなる医療保険者を考慮し、保険者間で財政調整する激変緩和の特例措置も講じる。政府は3月30日に同法案を閣議決定し、国会に提出済みだが、医療保険部会で特例措置について議論するのは初めて。厚労省保険局保険課の西辻浩課長は「本来であれば法案提出前に紹介し、義論いただいた上で決定するということが理想ではあったが、事後の報告になったことについておわび申し上げたい」とした。
白川修二委員(健保連専務理事)は、今回のような法案提出の流れが再び起こらないようクギを刺した上で「私どもとしては理解できないような特例措置をなぜ提案するかということについて、非常に不満で強く抗議したい」と強調。齊藤正憲委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長)も、十分な審議を経ずに財政調整の枠組みが固まったと問題意識を示した。一方、菅家功委員(連合副事務局長)は、同法案によって本来あるべき短時間労働者の社会保険加入の姿に一歩近づいたとの認識を示し「当分の間、激変緩和措置を講じることについても十分、理解できる」と述べた。
鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、人口減少社会の中で労働力確保の必要性が高まっていくとし、長期的な視点で財政調整を行いながら適用拡大を実現していく必要があるとの認識を示した。
●審査支払機関の議論開始
この日の同部会では、衆院決算行政監視委員会の指摘を踏まえて審査支払機関の在り方に関する議論を開始した。同委員会は2011年12月に、社会保険診療報酬支払基金と国保連のレセプト審査事務について「統合に向けた検討を速やかに進めるべき」との決議を採択しており、6カ月以内の報告を求めている。
厚労省はこの日の同部会に、審査支払機関の統合に関する主な論点を提示。▽審査の判断基準に差異が生じないようにする取り組み▽審査支払機関が担っている紛争処理の役割は、複数組織による競争の枠組みと一本化した組織と、どちらがより適当か─などを提起。▽統合によるコスト削減、審査の質の向上▽現在の審査の適正化・効率化、コスト削減などの取り組みとの関係をどのように考えるか▽競争環境の整備という視点をどのように進めるか―なども挙げた。(4/19MEDIFAXより)