【適正化計画】「一律目標なし」に保険者ら懸念/適正化計 画、医療側は一定評価  PDF

【適正化計画】「一律目標なし」に保険者ら懸念/適正化計 画、医療側は一定評価

 2013年度から始まる次期医療費適正化計画をめぐり、国が各都道府県に示す「基本方針」を詰める議論が佳境に入った。厚生労働省保険局は6月21日の社会保障審議会・医療保険部会に、現段階での基本方針改正案を提示。地域主権改革によって計画策定に対する都道府県の裁量権が増したことから、適正化に向けて参考にできる考え方や「推計ツール」は示すものの、一律の目標は示さないとした。医療関係団体の委員からは評価する意見も出たが、保険者側の委員からは「国としての強い意志が感じられない」と医療費適正化の勢いが弱まることを懸念する声が上がった。

 厚労省は、同部会や都道府県の意見を踏まえて基本方針改正案の内容を詰め、12年夏の同部会にあらためて示す予定だ。

 08−12年度の第1期で示した現行の基本方針では、医療費推計とともに特定健診・特定保健指導の実施率や療養病床削減、平均在院日数短縮の目標などを適正化計画に盛り込むことを定めている。ただ、11年8月に成立した「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」によって、医療費推計以外の項目は都道府県の任意記載事項となった。このため厚労省は一律の目標は示さず、平均在院日数の推計に活用できる推計ツールなどを提示する方針。厚労省によると推計ツールとは、一般・療養病床などの見込み数や特定健診実施率の目標値などから平均在院日数の短縮効果を推計できる計算式。

 こうした厚労省の方針に対し保険者側の委員からは異議が噴出。白川修二委員(健保連専務理事)は、医療費の増加が続けば医療保険と国の財政を維持できないと危機感を表明し、数値目標や具体的な施策を示して医療費適正化を推進していく必要性を訴えた。基本方針改正案については「国としての強い意志が感じられないというのが非常に残念」と述べた。小林剛委員(全国健康保険協会理事長)も「危機感が希薄と言わざるを得ない」と述べ、医療費適正化の方策を国として明確に示すよう修正を求めた。

 一方、医療関係団体の委員からは、厚労省が機械的に設定した療養病床数のみを目標とする考えには立たない方針を示したことに、一定の評価の声が上がった。武久洋三委員(日本慢性期医療協会長)は「療養病床さえ減らせば医療費は適正化されるというばかげたベクトルで動いてきたのが訂正されたこと は、大きなエポックメーキング」と指摘。急性期病 床に慢性期の患者が混在している状況を是正すれば 医療費適正化につながるとした。鈴木邦彦委員(日 本医師会常任理事)も療養病床の削減目標が外れた ことを評価した上で、推計ツールの配布によって都 道府県の自主性が薄まらないよう配慮を求めた。 (6/22MEDIFAXより)

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