【財政審】財政審、診療報酬本体引き下げ建議/薬価財源切り離しも
財政制度等審議会の吉川洋会長(東京大大学院教授)は11月29日、麻生太郎財務相に「2014年度予算の編成等に関する建議」を手渡した。建議では、政府全体の14年度予算編成の中で医療費を「最大の焦点」と位置付け、診療報酬本体の引き下げを求めた。建議書の後半部分には「社会保障補論」という特設ページまで設け、医療費の自然増に厳しく切り込んでいる。
財政審は「医療費の自然増とは何か、その中に合理化する余地はあるか」という観点で議論し、薬価財源の切り離しに焦点を当てた。薬価改定については「概算要求の前に薬価調査の結果が判明していれば、市場実勢価格を踏まえて要求したはず」とし、薬価と市場実勢価格との差額分を「過大要求している」と指摘。薬価差分の財源化を否定した。
さらに、「薬価が下がった部分を診療報酬本体部分に流用すれば、特定財源化そのものだ」とも記述。薬価改定率と診療報酬本体の改定率を差し引きする「ネット改定率」の概念そのものをなくすべきだと指摘した。薬価調査を毎年行い、市場実勢価格を概算要求に反映させる仕組みを15年度予算編成から確立することも求めた。
診療報酬本体の改定については、医療経済実態調査で改善傾向が続いていることや、7対1入院基本料を算定する病院が多く、高コスト構造になっていることなどを挙げ「本体マイナス改定」を求めた。消費税率8%への引き上げに伴い、消費税分を薬価や診療報酬本体に補填する必要性は認めたものの、診療報酬本体の改定率については「自然増からのマイナスと合わせて水準を決めるべき。(補填分との)トータルでのプラス改定を前提とすべきではない」とした。診療報酬本体がマイナス改定だったとしても、高齢化による患者増で医療機関収入の増加基調を確保できるとも指摘している。
医療提供体制の是正策として診療報酬を活用することについては、「全国一律の診療報酬で対応すれば、行き過ぎた医療提供体制か、改革効果が乏しい結果に終わる可能性が高い」と否定。「公立病院偏重」などと指摘される地域医療再生基金の運用を見直した上で、消費増税分を活用した新たな財政支援制度として位置付けるべきとした。
70−74歳の医療費自己負担を段階的に2割に戻す時期については「遅くとも14年4月から実施」とし、後期高齢者医療制度の低所得者向け保険料軽減措置についても「段階的な見直しを前提に、速やかに検討に着手し、早期に結論を得るべき」とした。
薬価制度改革では▽長期収載品の薬価大幅引き下げ▽新薬創出・適応外薬解消等促進加算の大幅縮小▽市販品類似薬の保険適用除外▽後発医薬品の価格に基づき保険償還価格を設定し、それを上回る部分を患者負担にする「参照価格制度」の導入検討―などを盛り込んだ。調剤報酬体系の引き下げも検討すべきとした。
●介護費用の自然増にも精査が必要
「建議」は、医療費だけでなく介護費用の自然増についても精査が必要と指摘した。次期介護報酬改定が行われる15年度の予算編成に際し、サービスの普及により増加する受給者増の実態について分析する必要があるとした。
建議では、15年度介護報酬改定における課題の一つに介護職員の処遇改善を挙げた。関連して、介護事業者の収支はおおむね改善傾向にあるとし、「とりわけ特別養護老人ホーム等の施設は高い収益率を上げ、総じて内部留保を積み上げている状況にあることを十分踏まえるべき」とも記載した。ただ、内部留保は全容が必ずしも明らかになっていない点を問題視。設置主体が経営情報を公開することが必要不可欠と指摘した。
次期介護保険法改正において、要支援者に対する予防給付を市町村事業に移行する方針が示されていることについては、「質を低下させることなく効率的にサービスが提供される途を切り開くものであり、一定の前進が図られるものと評価する」とした。(12/2MEDIFAXより)