【財政審】医療費総額管理へ、レセデータ活用で議論継続/財政審分科会  PDF

【財政審】医療費総額管理へ、レセデータ活用で議論継続/財政審分科会

 財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は3月28日、社会保障をテーマにヒアリングと議論を行った。医療費の総額管理に向けて、レセプトなどの医療・介護情報をITで統合的に活用する試みについて、今後も議論していく方向性で一致した。ただ、吉川会長は「一律で診療報酬を比例的に抑えることを考えている委員は、いないのではないか」と述べた。

 ヒアリングに出席した松田晋哉・産業医科大教授は、まず近年の欧州での医療制度改革について説明。特徴として▽質を落とすことなく、より費用効果的なサービスに利用者を誘導する「代替政策」▽生活圏域でのプライマリーケアを中心とした総合医療介護サービスである「コミュニティケア」▽医療費膨張を抑えるための「緩やかな総額管理」―の3点を挙げた。2025年に向けた日本の医療・介護の提供体制改革も方向性は欧州と合致しているが、「緩やかな総額管理」が必ずしも明確ではないとして、視野に入れる必要性があるとした。

 その上で松田教授は「日本のレセプトを中心とした医療データは優れたものである」としつつ、有効活用されていないと主張。最大の阻害要因を「どの主体がどの情報をいかに活用すべきか」のコンセンサスがないこと、とした。国は明確な方針と目的を出し、都道府県がDPCやナショナル・データベース(NDB)のデータをITで統合的に利活用して、医療の量・支出目標を設定すべきと提言。これらのデータは、保険者機能の強化や医療の質の管理に活用する仕組みにも利用できるとした。

 議論では、総額管理について「ペナルティーなど実効性をどのように担保するかが課題」「保険者ごとに医療費支出について予算をつくることにデータを活用すべき」「保険者が医療費を上げたくない場合に国費に付けまわし、保険者機能が働きにくくなっている」といった意見が出た。厚生労働省の健康づくり推進本部が行っている医療費5兆円適正化の取り組みについては意見が出なかったが、吉川会長は「以前の議論で、厚労省の計画には事後検証がないのが問題だとする意見があった」と振り返った。

 また、プログラム法などで定められた政策課題について、委員からは「各都道府県が地域医療ビジョンをつくることになるが、医療費には国費も支出されているので、国として医療ニーズ・医療費の推計をきちんと行うべき」「全面総報酬割を導入する時は、前期高齢者医療への公費投入も検討すべき」「社会福祉法人の内部留保については社会貢献活動よりも、従業員の処遇改善や介護報酬、非課税措置の見直しにつなげるのが筋だ」といった意見が上がった。(3/31MEDIFAXより)

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