【談話】社会保障・税一体改革(社会保障部分)の修正合意に抗議し消費税増税法案を採決しないこと、「社会保障制度改革推進法案」を提出しないことを求める
2012年6月19日 京都府保険医協会 副理事長 垣田さち子
民主党、自由民主党及び公明党の3党が2012年6月15日、社会保障・税一体改革の推進に関し、修正合意した。
私たちは修正合意に対し抗議すると共に、消費税増税法案を採決しないこと、合意内容に含まれた社会保障制度改革推進法案の国会提出を行わないよう強く求める。
その理由を以下に述べたい。
そもそも、今回の修正合意は、現政権が消費税増税法案成立へなりふりかまわず突き進んだことの結果である。増税のためなら、自ら政権公約を否定することも厭わない姿に、あの政権交代時に抱いた期待はもはや完全に崩れ去った。社会保障の機能拡充どころか、社会保障改革が増税の露払いほどの意味も持たない状況を前に、消費税増税法案の採決を認めることができるはずがない。
同時に、最も由々しきは確認書冒頭に掲げた社会保障制度改革推進法案である。これは、自由民主党が5月29日に公表した対案を踏襲している。合意では、この法案を速やかに取りまとめ、修正した政府提出の関連法案と共に、今国会で成立を図るとしている。それは、政府の社会保障・税一体改革案同様の「自助・共助・公助」論に、自由民主党の対案が強調した家族相互の助け合いを加え、それを社会保障制度改革の基本とする。その上で、医療保険では「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」を、介護保険では「保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービスの効率化及び重点化」を打ち出す。そして、医療・介護・年金は社会保険制度を基本に、公費負担費用は消費税を主要財源とし、その使途も社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てるとする。生活保護制度でも「医療扶助等の給付水準の適正化」を強調し、国会提出に至っていない高齢者医療制度改革等は、新たに社会保障制度改革国民会議で議論するとした。まさに、新自由主義改革路線によるさらなる社会保障改革を進めるものに他ならない。
もしも、このような内容を二大政党が合意の上で、国会成立させるようなことになれば、今後の社会保障改革の方向性が決定づけられ、医療者・国民の望む真の社会保障制度拡充の道は遥か彼方に遠ざけられてしまう。果たして、民主党政権にそのことの持つ重大な意味がちゃんと理解できているのか。そもそも、このような内容を、法案提出すら行っていないのに、予め成立を約束すること自体が、国会軽視・国民無視・議会制民主主義否定である。
私たちが望むのはこの国に暮らすすべての人々が、国の責任で必要な医療・福祉をあまねく享受できる社会保障制度と、それを実現し得る国の姿である。
私たちは今後も、新自由主義改革とは違う方向での社会保障改革をめざし、たゆまぬ努力を続ける決意である。