【規制緩和】米国の破滅した医療に「日本はすべきでない」/米経済学者ら  PDF

【規制緩和】米国の破滅した医療に「日本はすべきでない」/米経済学者ら

 内閣府経済社会総合研究所が主催したESRI国際コンファレンスは5月31日、「日本経済の再生に向けて」と題したパネル討論で、産業競争力会議で民間議員を務める竹中平蔵氏(慶応大教授)と米国のジェフリー・サックス氏、ジョセフ・スティグリッツ氏(共にコロンビア大教授)が規制緩和をめぐって意見を戦わせた。成長戦略の一環である規制緩和は日本に必要とする竹中氏に対し、サックス、スティグリッツ両氏は米国の医療などを事例に反論。会議を通して金融緩和と財政出動の有効性については意見が一致していただけに、成長戦略の難しさを際立たせる形となった。

 冒頭、竹中氏は「政府は民間の自由度を上げることを優先すべき」と述べ、企業経営者の委員らが企業の新陳代謝を進める改革を拒んでいるとして、政府の規制改革会議の議論は有望ではないと指摘した。7月の参院選後は、さらに、族議員らの力が増すと考えられるとして、「安倍首相には、規制緩和を含めた経済改革に最優先で政治資源を傾けてほしい」と述べた。

●規制緩和は危険な方向/サックス氏
 一方、サックス氏は「米国では規制緩和で民間企業にリーダーシップを与えた結果、強力な利益団体・ロビイストを生み出した。無駄が多く、入院コスト・医薬品が高額な破滅した医療制度に、日本はするべきではない。規制緩和・民営化は危険な方向性だ」と警告した。

●規制緩和に失敗、貧民から搾取/スティグリッツ氏
 スティグリッツ氏も「米国は規制緩和に失敗し、貧しい人を搾取している。民間の首を絞めてはいけないが、市場には失敗があり、政府には重要な役割がある」と述べた。

●副作用含め慎重な議論必要/竹中氏
 これに対し竹中氏は「日本と米国では規制緩和のイメージとレベルが違う。日本では15年間も農業の株式会社化を議論している。(全体として)規制緩和の善しあしを議論しても仕方ないので、個別の政策で副作用も含めた慎重な議論が必要」と応じた。

 スティッグリッツ氏は「日本の状況を考えると、個々の分野では規制緩和は必要だろう」とした上で、「慎重に行うべき」とくぎを刺した。(6/3MEDIFAXより)

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