【規制改革】保険収載を前提としない併用、可能性は?/規制改革・公開討議  PDF

【規制改革】保険収載を前提としない併用、可能性は?/規制改革・公開討議

 政府の規制改革会議が11月28日に保険外併用療養費制度をテーマに開いた公開ディスカッションで、保険収載の見込みが薄い技術を先進医療Bのままにとどめておくことが可能か否かという論点が浮上した。“混合診療の全面解禁”ではなく、現行制度の在り方が議論の焦点となり、制度の根本的欠陥と指摘する声と、運用面の問題と捉える見方の双方が示された。

 保険外併用療養費制度は、将来的な保険収載を前提とする「評価療養」と、差額ベッドや予約診療などの「選定療養」で構成されている。

 会合では、金沢大大学院整形外科の土屋弘行教授が先進医療Bとして実施している「悪性骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法」を紹介した。シスプラチンやドキソルビシンなど既存の抗がん剤にカフェインを併用投与することで、抗がん剤の作用を増強する技術。土屋教授によると、骨肉腫への抗がん剤の有効率は40%ほどだが、カフェインとの併用化学療法の多施設共同研究では悪性骨腫瘍35例(骨肉腫33例)に対し77.1%の有効率を示した。

 ところが、薬事申請について製薬企業に相談すると「カフェイン注射薬は安価で、古い薬で特許もない。投資資金の回収に100年以上を必要とするため薬事申請はできない」という回答だった。評価療養が将来的な承認取得と保険収載を前提としているため、土屋教授は「承認取得が困難な薬剤は引き続き先進医療で、あるいは別の枠組みで適応外使用を許す、すなわち“混合診療”を認めてもよいのでは」と述べた。

●選択肢としてあり得る議論/厚労省・神田審議官
 森下竜一委員(アンジェスMG取締役、大阪大大学院医学系研究科教授)は「新しい技術だが、使っているものが古い。市場が小さく薬価が低く、開発会社がない。こうしたものは一定の頻度で今後も出る。それをどう助けるかだ」と指摘。厚生労働省の神田裕二大臣官房審議官は、評価療養は将来的に保険診療に取り込むことが基本原則であると説明した上で「承認を取らずに、その部分はずっと患者負担で併用にとどめるという形は根本論。議論をする必要はある」と答えた。

 神田審議官は中医協の費用対効果部会の議論にも言及。「有効性はあるが費用対効果が低いものについて、使用を可能にした上で保険償還はしないという範疇をつくるかどうか。選択肢としてあり得る議論」と述べ、商業上の理由で開発されない医薬品や、費用対効果が小さい医薬品の保険上の扱いを「根本論としての検討課題」と位置付けた。

●全面解禁とは別、運用上の問題/日医・今村副会長
 カフェイン併用化学療法の例を「制度そのものの落とし穴」「制度の根本的な見直しにつながる問題」と指摘する声も上がった。

 これに対し日本医師会の今村聡副会長は「今の制度をベースにし、困ることがあれば議論をして取り入れるべき。今回のような問題はあるが、混合診療の全面解禁とは別の話。これをもって議論の堂々巡りはよくない」と述べ、あくまで現行制度の運用上の問題だとの認識を示した。(11/29MEDIFAXより)

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