【米医療保険】米医療保険改革は合憲/最高裁、加入義務容認
米連邦最高裁は6月28日午前(日本時間同深夜)、オバマ政権最大の政策実績である医療保険改革法について、根幹部分である国民の保険加入を義務付けた条項を含め合憲との判決を言い渡した。世論を二分したオバマ改革の象徴は、司法の場で正当性を認められた。「公平な社会」を掲げ、11月の再選を狙うオバマ大統領への追い風となる。
判決は9人の判事が5対4に割れる僅差。オバマ氏は午後の声明で、判決を「全ての米国民にとっての勝利だ」と歓迎。大統領選の共和党候補となるロムニー前マサチューセッツ州知事はこれに先立ち、同法の撤廃が「私の任務」と述べ、大統領選で是非を問う考えを強調した。「国民の誰もが安心して医療を受けられる社会」を公約して当選したオバマ大統領は、2010年3月に医療保険改革法を成立させた。
共和党の強い26州は、保険加入義務化は憲法1条が定めた連邦議会の立法権限を逸脱すると違憲性を指摘し「個人の自由を侵害する」と提訴。だが最高裁のロバーツ長官は判決で、加入義務化は「税の一種とみなすことが可能」で、憲法の範囲内だと指摘した。
米国には日本のような国民皆保険制度が存在せず、保険加入率は約83%。高齢者と低所得層を対象とした公的医療保障を除くと、勤務先が提供する民間保険が一般的だが、失業で無保険状態に陥るなどして十分な医療を受けられない国民が多数いる。
医療保険改革法は高所得層への増税を財源に、中低所得層への保険料公費補助や保険加入義務化を盛り込んでいる。14年に本格施行、21年末までに加入率を95%に引き上げ保険料を抑制、財政赤字削減も図る。
共和党保守派などは法制化の過程で「社会主義化」と反発を強め、「反オバマ」の保守派運動「ティーパーティー(茶会)」台頭につながった。(7/2MEDIFAXより)