【社会保障】高額療養費の見直し、決着は予算編成で/医療保険部会  PDF

【社会保障】高額療養費の見直し、決着は予算編成で/医 療保険部会

 社会保障審議会・医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大教授)は10月7日、高額療養費制度の具体的な見直し案を議論し、年末の予算編成過程で決定することにした。厚生労働省は議論を踏まえ、新たな高額療養費制度を設計する。

 高額療養費制度の拡充は、過去に幾度となく議論されてきた。2012年2月に閣議決定された社会保障・税一体改革大綱には「高額療養費の改善に必要な財源と方策を検討する必要がある。抜本的見直しまでの間も改善が必要で、年間での負担上限導入などを目指す」と記載。医療保険部会が検討したが、13年度での導入には至らなかった。

 13年夏になると、社会保障制度改革国民会議が報告書の中で高額療養費制度の見直しに言及。「より細やかな対応が可能となるよう細分化し、負担能力に応じた負担となるよう限度額を見直すことが必要」と記載した。報告書を踏まえ8月21日に閣議決定された社会保障制度改革の「プログラム法案」には「70−74歳の自己負担と併せて高額療養費の見直し」が盛り込まれ、医療保険部会は検討を再開した。

 厚労省は会合に、高額療養費の見直しとして3つの案を提示。案1は最も細かく所得に応じた限度額を分けたもので、15年度満年度ベースで給付費が320億円増加する(保険料130億円、公費190億円)。案2は最も保険料への影響に配慮したもので、給付費増は70億円(保険料マイナス30億円、公費100億円)。案3は、案2をベースにしつつも年収370万−770万円の層の月負担限度額を据え置いたもので、給付費は850億円増える(保険料600億円、公費250億円)内容となっている。国民会議の報告書が抜本改革を求めたことにより「年間上限」の考え方ではなく、細分化の案を示した形だ。

 保険者負担については、70歳になった人の自己負担を14年度から順次2割にした場合、19年度にはどの保険者も負担が軽減され、協会けんぽ、健保組合、共済、市町村国保で計990億円の負担減になることも合わせて資料に記載し、高額療養費と70−74歳の自己負担見直しを併せて行えば、数年後には保険者負担の軽減になることも示した。

●小林委員が反発、鈴木委員は「案3」主張
 議論では小林剛委員(全国健康保険協会理事長)が「どの案も財政中立ではない」と指摘し、厚労省案に反対した。3つの案とも協会けんぽの財政負担は増加するだけでなく、ほかの保険者と比べて最も増えることに反発した格好だ。保険局の大島一博総務課長は「低所得層の限度額を引き下げる見直しのため、結果的に協会けんぽへの保険料影響が一番大きくなる」と理解を求めた。

 鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「多くの負担をしながら子育てなどをしていることを考えれば、案3が良い」と発言したが、案の練り直しを求める声も多く議論は決着しなかった。遠藤部会長が「公費の使い方は予算編成と強く関係する。今日の意見を反映しながら予算編成に対応してもらいたい」とし、了承を取り付けた。3つの案をベースに検討するが、予算編成の結果や意見を踏まえて制度設計をするため、どれとも異なる内容になる可能性も残されたままだ。(10/8MEDIFAXより)

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