【社会保障】高額療養費、高所得者は負担引き上げへ/
厚労省
厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大教授)は9月9日、高額療養費制度を現行の仕組み以上に個々の負担能力に応じた仕組みに改めるための具体的な議論を始めた。厚労省は、現行の所得区分を細分化し、自己負担限度額を細かくする見直し案を示した。出席委員からは見直しの方向性に理解を示す意見が出た一方、システムの改修や患者負担などの視点で配慮を求める意見が出た。厚労省は2014年度中の政令改正を視野に年内の取りまとめを目指しており、次回の見直しに関する会合で具体案を示す方針。
厚労省が示した見直しの方向性によると、70歳未満は「上位所得者(年収約790万円以上)」「一般所得者(年収約210万円−約790万円)」「低所得者(住民税非課税)」の3つのうち、上位所得者と一般所得者の所得区分を細分化する。このうち上位所得者は全ての対象者の月額負担上限額を引き上げる方針。一般所得者のうち、所得の比較的高い人は限度額を引き上げるほか、中間層は据え置き、比較的低い所得層は引き下げる。70歳以上は「一般所得者」と「現役並み所得者」の両区分で細分化を実施する。
議論では所得に応じた見直しに理解を示す意見が目立った。このうち、白川修二委員(健保連専務理事)は財源をめぐり「われわれは財政中立を求める。今回は財源を他から手当てせず、あくまで高額療養費の中で検討するのか」と質問すると、厚労省保険局の大島一博総務課長は「財政中立というより、高額療養費制度を充実させる方向で提示させてもらいたい」と応じた。このほか、所得の把握や申告などで患者に負担が出る可能性を懸念する意見(堀憲郎委員・日本歯科医師会常務理事)や、制度化に伴うシステム改修で配慮を求める意見(岩村正彦部会長代理・東京大大学院教授)などが出た。
高額療養費の見直しをめぐっては、社会保障制度改革国民会議の報告書で「高額療養費の所得区分について、よりきめ細やかな対応が可能となるよう細分化し、負担能力に応じた負担となるよう限度額を見直すことが必要である」と盛り込まれているほか、政府が閣議決定した社会保障制度改革のメニューやその実施時期を示した「プログラム法案」の骨子でも見直しに触れている。(9/10MEDIFAXより)