【社会保障】紹介なし大病院受診、保険給付の対象外に/「再診は乱暴」と安達氏  PDF

【社会保障】紹介なし大病院受診、保険給付の対象外に/「再診は乱暴」と安達氏

 社会保障制度改革国民会議が報告書に盛り込んだ「紹介状のない患者の一定病床数以上の病院の外来受診に、一定の定額自己負担を求める仕組み」について、厚生労働省は紹介状なし患者の大病院受診は保険給付の対象にならない仕組みとする方向で検討していく。対象となる病床規模や患者に求める定額の自己負担額などの詳細は、社会保障審議会・医療保険部会で議論する考えだ。これに対し中医協診療側委員の安達秀樹氏(京都府医師会副会長)は「外来の機能分化を進める必要性は理解できるが、対象は初診にとどめるべきだ。初診で診断を受けた後、引き続き受療する再診患者について、紹介状の有無で保険給付の機会を奪うべきではない」と指摘している。

 安達氏は取材に「これまで『外来は診療所』といわれてきたが形骸化している。フリーアクセスの一部制限ともいうべき国民会議の提案は一歩進んだ対応であり、必ずしも乱暴な話ではない」と述べた。その上で「初診はさまざまな疾病・病態の患者が混在する。しかし再診患者は高次医療が必要な患者もおり、紹介状の有無で保険からの給付がなくなるのは乱暴だ」と主張した。

 さらに、「初診患者でも例えば複数疾患を抱えた患者などをどう切り分けていくか。制度に落とし込む場合の条件付けは単純ではない」と指摘。「大病院が門前クリニックを設置するなど、地域医療に波紋を起こすことがあってはならない」とも述べた。

●診療所の1日単価は「1000点超」

 一方、国民会議報告書の「かかりつけ医に相談することを基本とするシステムの普及、定着」について、安達氏は「生涯教育を充実し、国民・患者の信頼に足るかかりつけ医にしていくことが必要だ。短絡的なゲートキーパーといった英国のGP制度にならないよう留意しながら、かかりつけ医機能を伸ばす仕組みが必要だ」と述べた。

 かかりつけ医機能の充実は、次期診療報酬改定でも重要な論点となる。安達氏は「高齢者のかかりつけ医機能の充実は原則出来高払い方式を目指すべきだ」との姿勢を堅持しつつ、「一定の条件が整えば包括の議論に応じることは可能だ」としている。包括点数の前提条件としては▽点数設定は実態に即した内容にする▽大学病院での先進的な医療が必要な患者は、一定期間、かかりつけ医診療と並行受診できるようにする▽他科の診療を阻害せず、急性増悪時には包括の枠から外す─を挙げた。安達氏は「過去の後期高齢者診療料は600点だった。最近は1日当たり出来高ベースで少なくとも1000点はかかっているとのデータを得ている」と述べた。

 このほか国民会議報告書に対しては、行き過ぎた効率化に懸念を示した。(8/20MEDIFAXより)

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