【産科補償】14年からの制度刷新内容を決定/産科補償制度運営委
日本医療機能評価機構の産科医療補償制度運営委員会(座長=小林廉毅・東京大大学院教授)は6月10日、同制度を2014年1月から刷新するための報告書を承認した。一部の文言修正は座長一任。今回の制度見直しは運用面が中心で、同制度が妊産婦に支払う「補償金」と、分娩機関側が保険会社などを通じて妊産婦に支払う「損害賠償金」の調整について、同制度が主体的に開始する判断基準などを盛り込んだ。
補償金と賠償金の調整を開始する基準の明確化としては、まず医学的観点から「一般的な医療から著しくかけ離れていることが明らかで、かつ産科医療として極めて悪質であることが明らかなケース」と判断し、次に法律的観点から検証し損害賠償責任が明らかと判断した場合とした。法律的観点で検証を開始する基準の具体例としては「極めて怠慢な医療行為」「著しく無謀な医療行為」「本来の医療とは全く無関係な医療行為」を挙げた。
新制度では原因分析の迅速化を図る。原因分析報告書を1年以内に送付できるよう、6つある原因分析委員会部会の委員をそれぞれ増員し、現在の2倍の件数に対応できるよう体制を強化する。12年公表分の実績では、補償対象として認定後、分娩機関に原因分析報告書が送付されるまで平均14.5カ月となっているのが実態だが、分娩機関側には半年から1年で送付すると案内している。補償対象の増加に応じて、さらなる体制強化を検討する方針も明記する。
●補償対象や掛け金、検討は7月から
同運営委は7月1日に予定する次回会合から、補償対象範囲や補償水準、掛け金の水準、剰余金の使途などについて15年1月から刷新するための議論を開始する。「医学的調査専門委員会」がまとめる同制度の補償対象者数推計値などに基づいて議論する。会合では委員から、満5歳の誕生日となっている同制度への申請期限を過ぎた場合への対応について、特例的な延長も議論すべきとの意見や、同制度を今後はどのように見直していくか検討する必要があるとの意見が上がった。同制度は09年以降の出生が対象のため、14年1月から順次申請期限を迎える。
●剰余金の申し立て「厚労省と相談し対応」
会合で同機構は、剰余金をめぐる問題に言及。制度を開始した09年の補償対象者が最終的に確定するのが15年中頃となるため、まだ収支は確定していないとし「厚生労働省や弁護士らと相談の上、対応する」との見解を示した。同制度の剰余金をめぐっては、分娩機関28施設が同機構に年間200億円(5年間で合計1000億円)を超える剰余金が生じているとし、分娩機関を通じて妊産婦(合計約500万人)に1人当たり2万円ずつ返還すべきとして、国民生活センターに和解の仲介申請書を提出し、受理されている。(6/11MEDIFAXより)