【産科補償】分娩は総合的な観察・管理の徹底を/産科補償の再発防止報告書
日本医療機能評価機構が運営している産科医療補償制度・再発防止委員会(委員長=池ノ上克・宮崎大医学部付属病院長)は5月7日、重度脳性麻痺を発症し補償対象となった事例のうち、公表済みの原因分析報告書に基づく統計データや提言などをまとめた「再発防止に関する報告書」を公表した。会見した池ノ上委員長は「モニタリングとその評価を継続し、児の健常性を担保しながら分娩を進めていただきたい」と述べた。「(同報告書で)総合的な観察・管理を徹底して分娩を進めていくよう提言できた意義は大きい」とも強調した。
報告書の対象は累計188件で、脳性麻痺発症の主たる原因が特定されているのは145件。このうち「単一の原因」は106件で「常位胎盤早期剥離」(48件)、「臍帯因子」(30件)などが多かった。2−4の原因が関与したのは39件で「臍帯脱出以外の臍帯因子」「絨毛膜羊膜炎またはその他の感染」「常位胎盤早期剥離」などが多く挙がった。「原因が明らかではない、または特定困難」も43件あった。
●背景因子なくても発症
池ノ上委員長は、単一の原因として最も多かった常位胎盤早期剥離について「背景因子がない事例でも発症し、児の脳障害につながっている実態が浮かび上がってきた」とし、「これまでに分かっている背景因子のみにとらわれることなく、幅広く総合的に患者の訴えや検査などをきちんと取り上げ分析し、対応することが必要」と述べた。
原因が特定できなかった事例については、カルテの記載が不十分などの情報不足が理由ではないとした上で「最新の産科医学の先端研究をもってしても判断できないような事例が主な要因」とした。例として子宮内感染症と児の健常性の関係を挙げた。
報告書ではこのほか、5つのテーマ別に産科医療者への提言と、学会や職能団体、国、地方自治体に対する要望を盛り込んだ。取り上げたテーマは▽臍帯離脱▽常位胎盤早期離脱▽子宮収縮薬▽新生児蘇生▽分娩中の胎児心拍数聴取─の5つ。(5/8MEDIFAXより)