【生活保護】大阪市の登録制度、地元医師会が反発/「フリーアクセスの侵害」
大阪市(橋下徹市長)は生活保護受給者への医療扶助の適正化に向けて、西成区をモデル地区に、受給者が診療科ごとに医療機関を1カ所登録する新たな制度を8月にも開始する方針を示している。地元の西成区医師会は、受給者のフリーアクセス権を侵害し、一般患者の医療費抑制策にも発展しかねない仕組みとして反発。患者の権利など法的観点から、大阪弁護士会人権擁護委員会との協議も開始した。
●医療扶助適正化、個別指導の徹底も
西成区によると、同区は4人に1人が生活保護受給者で医療扶助費も年間275億円に上る。登録制度で一部患者の重複受診や重複服薬などを抑制するという。大阪市は市内全域から対象医療機関を抽出し個別指導を実施する方針も打ち出している。
西成区医師会の馬場谷勝廣会長は6月13日、取材に「生保患者に対する適切な医療提供体制の確保は必要だが、大阪市の施策は生保患者の医療機関のフリーアクセス権を侵害する可能性が高く、許容できるものではない。受診抑制で疾病の重症化にもつながる」とし、大阪市の方針に反対することを表明した。
その上で「西成区で医療費抑制策が成功すれば、全市の生保患者の受診対策に活用される予定だ。将来的には一般患者の医療費抑制策につながる可能性もはらんでおり、医師会としては危機感を持って対応している」とし、大阪市医師会連合会にも協力を得ながら活動を進めていく予定とした。大阪府医師会にはすでに報告してあるとし「日本医師会にも協力を求めていきたい」と述べた。
馬場谷会長は、2011年7月時点で、西成区の129医療機関を含め1538医療機関が西成区の生保患者へ医療提供を行ってきたと説明。「市の施策がそのまま行われれば、西成区で新規開業する医師はいなくなるだろう。地域医療が壊されようとしている」と危機感を募らせている。
大阪市が提示している医療扶助適正化対策は大きく3点。1点目が登録制度で、西成区の受給者は診療科ごとに医療機関を原則1カ所登録する。2点目は、新規開業の医療機関に対する個別指導。新規に医療扶助指定機関の指定を受ける場合、3年の間に必ず個別指導を受けることになる。ここで不適切な医療行為が判明した場合は、更新の指定申請を却下する。
3点目が全市医療機関を対象にした指定済み医療機関への個別指導の徹底だ。西成区の受給者を扱っている医療扶助指定機関の電子レセプトを分析し▽請求点数が一定値を超えるレセプトが多い医療機関▽再審査請求率が高い医療機関▽査定率・査定点数が高い医療機関―などを抽出。市長権限で立ち入り検査による個別指導を実施するという。(6/14MEDIFAXより)