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【理事提言】医事紛争ささいなことでもご相談を

医療安全対策部会 砺波博一

 医事紛争を扱う部署とも知らずに引き受けた京都府保険医協会の医療安全を担当して2年が過ぎようとしている。幸いにしてここ9年間は医事紛争の件数は減少を続けており、協会で扱う案件も減っている。先人達の絶え間ぬ努力はもちろんのこと、医療崩壊の原因の一つとなった福島県立大野病院産科医逮捕事件が、医事紛争減少の大きなターニングポイントとなったことも事実である。

 しかし、医療の不確実性から医事紛争がなくなることはない。また最近の傾向として、モンスターペイシェントに代表される言いがかり的なものは減っているものの、司法を介する件数は減っていない。つまりより深刻なケースの割合が増えている。更に院内での転倒などによる事故といった管理に係わる案件が増加しており、最近も府内の二介護施設で高額の支払い命令が出ている。

 この仕事を始めてつくづく感じることは、一旦紛争となれば、双方の背負う負担の大きさである。当事者となった会員の中には、日々の診療にも手がつかず、もう医療を続けられないという先生もおられる。我々が精神的な支えとならなければならないことを、改めて思い知らされる瞬間だ。

 医事紛争はある日突然やってくる。重大な案件はもちろん、些細なものでも、会員の皆さんはすぐに協会へご相談いただきたい。経験豊富な担当事務局の助言による対応だけで紛争にならずにすむこともある。事故報告があれば、医療機関、ときには患者側とも懇談し、双方の言い分を充分に聴いた上で、少なくとも2回の検討会で論議し、迅速な解決に努めており、解決率は約95%を誇っている。医学的な見地に立って、公平な判断を求める検討会では、白熱した議論が戦わされることも多く、担当理事達の熱意が伝わってくる。

 会員の皆さんは協会の医療安全対策部会だけには関わりたくないと思っておられるはずだ。しかし、万が一にも紛争発生の気配を感じたら、些細なことでも協会に速やかに連絡していただきたい。不幸にして医事紛争となってしまっても、我々とともに対応することで、より迅速な納得のいく解決に近づけるはずである。まだ協会の医師賠償責任保険に加入していない会員の方は加入をご検討いただきたい。また病院のみならず診療所においても、医療安全に係わる安全管理のための職員研修が義務化されているので、協会の研修を御利用いただきたい。

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