【特定行為】多死社会の看取り「5−10年の改定で道筋」/井上企画官
厚生労働省保険局医療課の井上肇企画官は11月17日、病院の在宅医療への関わりについて「今後5−10年の診療報酬改定で道筋をつけていくことになる」との方向性を示した。札幌市で開かれた日本医療経営学会学術集会のシンポジウムで述べた。
多くの国民が「自宅で最期を迎えたい」と望んでいるものの、在宅療養中の患者が容体悪化によって病院に入院すると、こうした望みはかなえられなくなる―。井上企画官はこうした意見があることも踏まえ、「病院が在宅医療に関わることは、在宅での看取りを困難にするのか」という命題を提示。「在宅や地域での看取りが増えていく中で、病院の役割としてどう介入できるか、あるいは介入しない方がよいのかについて、われわれも道筋が見えないのが現状だ」と話した。その上で、医療現場の意見も踏まえながら、診療報酬改定を通じて方向性を定めていかなければならない課題の一つとの認識を示した。
●地方、都会にそれぞれの課題
シンポジウムで井上企画官は今後10−30年の医療・介護を見通し、単なる高齢化ではなく後期高齢者が急増することを念頭に置いた対応が必要と強調。「団塊ジュニアを見送る2050年までが山だ」とした。50年には人口の8割が都市部に集中するとの予測を踏まえ、全国一律の政策では対応できないとの考えも示した。
また、20世紀は地方での高齢者へのケアが医療・介護の中心課題となっていたとする一方、21世紀は都会の集合住宅などで孤独に老いていく高齢者へのケアが課題となっていると分析。さらに現代社会は、地域社会が消滅に向かう地方での「撤退戦」と、地縁・血縁によるつながりがない都会での「新たな地域包括ケアの創出」という課題に直面していると指摘し、「それぞれの課題に向き合う診療報酬・介護報酬制度でなければならない」と述べた。(11/20MEDIFAXより)