【混合診療】規制改革会議の「選択療養」に反対相次ぐ
規制改革会議の提案した「選択療養」には医療界や保険者などから反発が広がっている。京都府保険医協会はNHK報道をきっかけに、3月25日に「国民皆保険を破壊する規制改革会議の混合診療解禁策に反対する」理事長談話を発表している。以下、メディファクスが報道した意見をまとめた。
●規制改革会議の「選択療養」に慎重姿勢/田村厚労相
田村憲久厚生労働相は3月28日の閣議後会見で、規制改革会議が提案した「選択療養制度」の創設に慎重な姿勢を示した。田村厚労相は、規制改革会議がどのような医療技術を想定しているのか分からないとしつつ「どう見ても有効性が認められないようなものもある。患者と医師が合意したからといって、それを保険外併用療養でというのはなかなか難しいのではないか」と述べた。
また、「患者と医師が同意しなければ、そもそも治療行為自体が成り立たない。それは大前提だ」とし、「海外先進国で広く使われている抗がん剤などが、日本国内では保険外併用療養費制度の適用にならないことについては、タイムラグを早めることをわれわれも考えている。そうした思いは一緒だ。今まで以上に、安全性を担保しながら早く提供できる努力をしたい」と述べた。(3/31MEDIFAXより)
●選択療養に「悪徳医師が必ず現れる」/羽生田議員が警鐘
羽生田俊参院議員は3月28日、規制改革会議が提案した「選択療養」に対して異議を唱えた。羽生田氏は「制度を利用して儲けようとする悪徳医師が必ず現れる。事故や問題が起きなければ理解ができないのか。反省がないのか」と警鐘を鳴らし、「新たな保険外併用療養費制度をつくることは間違いだ」と強調した。
さらに羽生田氏は、日本の医療は世界最高水準であるとし「外国で使われている薬や治療法が、あたかも日本の医療を超える素晴らしいものだと思うこと自体が間違いだ。最大限譲歩して、海外で行われている、優れていると思われる治療法への対応は、現行の評価療養を活用すれば十分に対応可能だ」と主張。承認までの期間が長いという規制改革会議の指摘に対しては「期間短縮するよう改善すればよい」と一蹴した。評価療養については「治療法や薬に対して、国がある程度の効果と安全性を確認している。これにより国民の安全が守られている」とし、優れた制度だと強調した。(3/31MEDIFAXより)
●規制改革会議の新たな保険外併用「のめない」/日医・横倉会長
日本医師会長で日本医師連盟委員長の横倉義武氏は3月22日、日医連医政活動研究会(北海道ブロック研究会)に出席し、政府の規制改革会議が検討している新たな保険外併用療養の仕組みについて「私たちとしてはのめない」と述べ、反対する考えを示した。反対の理由として、将来的に公的医療保険の給付範囲が縮小する恐れがあることを挙げた。(3/25MEDIFAXより)
●保険者3団体も「選択療養」反対/患者に健康上の不利益
健保連、国保中央会、全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険者3団体は4月3日、政府の規制改革会議が提案した「選択療養」に対する見解を出した。「選択療養」は患者と医師が合意すれば混合診療が原則可能となるため、実質的に有効性・安全性の確認が不十分な医療を広く患者に提供し、健康上の不利益をもたらす可能性があるとして「反対」を表明した。
当事者間の合意のみで成立した診療費を医療保険がカバーする仕組みは、医療保険制度の原則や財政運営を行う医療保険者の責任の範囲を超えるものだと主張。患者と医師の間には情報の非対称性があるとして、当事者間の合意に委ねる仕組みにも問題があると指摘した。
その上で、保険診療と保険外診療の併用範囲拡充を求める患者ニーズに対しては、先進医療制度の運用見直しによる迅速化などで対応すべきとした。(4/4MEDIFAXより)
●「選択療養」与党でも反発相次ぐ/自民・特命委役員会
自民党「社会保障制度に関する特命委員会」(野田毅委員長)は4月4日の役員会で、政府の規制改革会議が提案した「選択療養」などについて、規制改革会議の事務担当者から概要の説明を受けた。参加した厚生労働関係議員からは「市場原理主義で医療をやられたら、たまらない。最初から論外」(尾辻秀久氏)など反発が相次いだ。
会議は非公開で行われた。退席後に取材に応じた尾辻氏は「とりあえず(規制改革会議側の)話は聞いたが、どう聞いてもばかばかしい話だと、言い方は違うがみんな言っていた」と、議論が選択療養に対して批判的に進んだことを明らかにした。鴨下一郎氏も「支払い側の議論が(規制改革会議の中で)されていない。保険者が納得できる話ではないと指摘した」と述べた。
規制改革会議が選択療養をはじめ医療関連のさまざまな規制緩和策を打ち出していることを受け、与党として注意を払うために今回の役員会を開催したとみられる。役員会には厚生労働省から神田裕二大臣官房審議官、木倉敬之保険局長らが出席した。(4/7MEDIFAXより)
●「保険診療目指すことが前提」/田村厚労相
政府の規制改革会議が提案した「選択療養」をめぐり医療界や保険者の反発が広がっていることについて、田村憲久厚生労働相は4月4日の閣議後会見で「わが省としては、以前から安全性と有効性が一定程度認められる中で、保険診療を目指してもらうことが前提になっている」と強調した。その上で、この前提条件を念頭に、選択療養といった仕組みにとらわれることなく、日本で保険外併用できない医薬品や医療技術を少しでも早く併用できるようにしてほしいという患者の思いに応えられる制度づくりに努める考えを示した。(4/7MEDIFAXより)
●難病患者団体も「選択療養」に反対/厚労相と岡議長へ要望書
日本難病・疾病団体協議会は4月3日、規制改革会議が提案した選択療養制度(仮称)に反対する要望書を、田村憲久厚生労働相と岡素之議長宛に提出した。「選択療養」の導入は事実上の“混合診療の解禁”で、多くの患者が最先端医療を受けられなくなる恐れがあるとし、患者団体の声を聴くよう求めている。
JPAは、岡議長が記者会見で「(難病を抱える人が)自分が選んだ治療法が混合診療とみなされることで、保険給付を受けられるようにしてあげたい」と述べたとの報道を引用し、難病患者のためと言うなら、当事者であるJPAが十分に納得してから決めるべきだと主張した。
その上で要望書には“混合診療の解禁”は保険の効かない自由診療を公認することであり、患者の治療の選択肢を狭め、信頼できる治療の根拠すら患者には分からなくなり、国民の医療不信を際限なく助長すると説明。制度案では▽診療計画書の策定▽必要性・リスクの説明▽患者の承諾―を条件に挙げているが、わらにもすがりたい思いの患者にとって、対等なインフォームドコンセントがどれほど担保できるか疑問とした。
過去に医師が自由に投薬できることによって、多くの難病患者が生命と健康に大きな被害を被った経験があるとし、そうした時代への逆戻りは許されないと指摘。政府は“混合診療の原則禁止”の方針を堅持し、誰もが安心して最新の治療を受けられるよう「必要な医療は保険で」との原則を堅持した国民皆保険制度のさらなる拡充を求めた。(4/8MEDIFAXより)
●選択療養「到底容認できない」/日医・中川副会長
日本医師会は4月9日、政府の規制改革会議が提案した「選択療養」について、有効性や安全性を確認するための仕組みが不明確であることや、将来の保険収載を前提にしていない点を挙げ、導入に反対する考えを示した。中川俊男副会長が定例会見でこれらの問題点を指摘した上で「日医は現行の保険外併用療養費制度、特に評価療養の機動性を高めることで対応すべきで、選択療養の導入は到底容認できない」と述べた。
中川副会長は現行の先進医療について、先進医療A・Bは将来の保険導入を前提に、いずれも安全性や有効性の確保を重視している一方、選択療養の場合は、安全性などを客観的に検証する枠組みがない点を問題視。副作用や医療事故が起きた際の問題点の見極めが困難になることで、公的医療保険制度に対する信頼を失う可能性があると指摘した。
これまでの規制改革会議で示された論点整理の中で「一定の汎用性や有効性が認められれば評価療養の対象にしたり、保険に収載してはどうか」と明記された点も挙げ、「安全性」に言及しない規制改革会議の姿勢も疑問視した。(4/10MEDIFAXより)