【消費税】地裁判決、消費税非課税に「合理性」/「改定で配慮」は大臣の義務
社会保険診療報酬が消費税非課税なのは憲法違反であるとして、兵庫県民間病院協会の4つの医療法人が消費税負担に対する賠償を国に求めた訴訟で、神戸地裁(栂村明剛裁判長)は11月27日、原告の訴えを棄却した。判決では「社会保険診療等を非課税取引とする消費税法の規定は合理性を有する」と指摘した。一方で、厚生労働大臣には医療機関の消費税負担に配慮した診療報酬改定をすべき義務があると指摘した。
判決では、医療機関が仕入税額相当額を転嫁する方法として法制度上、診療報酬改定が想定されているとし「その仕組みにおいて代替手段として機能し得るものである限りにおいて憲法に違反するとはいえない」と判断した。
その上で、厚労大臣に対し「医療法人等が負担する仕入税額相当額の適正な転嫁という点に配慮した診療報酬改定をすべき義務を負うものと解するのが相当」とし、改定での配慮は大臣の義務と指摘。「配慮が適切に行われていない場合には、診療報酬改定は、裁量権を逸脱または乱用するものと評価することができる」とした。
2008年度と10年度の改定については「消費税が医療法人等に与える影響についても議論されていることが推認される」とし、「医療法人等が負担する仕入税額相当額の適正な転嫁について一定程度の配慮をしていたものと認めるのが相当である」と指摘した。
原告による損失補償請求については「原告ら主張の負担が存在するとしても、一般的に当然受忍すべきものとされる制限の範囲を超えているということはできず、これをもって直ちに原告らが特別の犠牲を負うものとは認めがたい」として退けた。
●大臣の配慮義務「画期的な踏み込み」
原告代理人である吉村幸祐弁護士は「非課税は違憲だとする主張が認められず、この判決の結論は遺憾」と不満を示した。ただ判決で、厚労大臣は医療法人の消費税負担に配慮した診療報酬改定をすべき義務を負うとしたことについては「この点は画期的な踏み込みと捉えてよいのではないか」と一定の評価を示した。その上で「診療報酬改定によっても多くの医療法人が多大な負担を強いられているのが現状であり、この現状を十分に理解せず、適正な評価が行われなかったことは誠に残念」とコメントした。
兵庫県民間病院協会は12月3日の臨時理事会で控訴しない方針を決定した。(11/28・12/4MEDIFAXより)