【業過罪】医療行為は業過罪の対象になるか/全国医師連盟シンポ  PDF

【業過罪】医療行為は業過罪の対象になるか/全国医師連盟シンポ

 全国医師連盟が東京都内で12月2日に開いた「医
療事故調シンポジウム」では、医療行為が刑法第211条で規定されている業務上過失致死傷罪(業過罪)の対象になり得るか否かで討論者らが議論を交わした。

 厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」の構成員を務める有賀徹・昭和大病院長は、「ヒューマンエラーもそれを導くような職務環境であればシステムの不全。一人一人の責任追及にはなりにくい」と指摘。「業務上過失致死・傷害という罪は私たちの業界にあるのだろうか」と問題提起した。

 医師と弁護士の資格をもつ浜松医科大医学部医療法学の大磯義一郎教授は「故意の重過失を刑事訴追すべきと判断した瞬間に、中等度の過失と重過失の間にグレーゾーンが入り、その判断のために取り調べが必要になる」と指摘。ただ、グレーゾーンの中での区別は非常に難しく、刑事罰を念頭に置いた取り調べでは訴追すべきではないケースもその対象になることを懸念し、刑事罰となりうることに疑問を呈した。また、「美容整形やレーシックなど、本質的な医療とは異なるところでの診療は違う規律、規範で括らなければならないと思ってきた」との見方を示し、「友達を連れてくれば割引、という種類の診療と、寝ずに働いて地域の救急医療を支えている話を同じ規範で規律しようとするのは問題だ」と訴えた。

 ビデオメッセージを寄せた厚労省の梅村聡政務官も、個人的な考えとした上で、「医師という立場からは医療行為そのものを業務上過失致死傷罪から外してもらいたいというのが本音」と話した。ただ、「刑法211条に手を入れていくのは大きな作業で、なぜ医療だけ対象外にするのかということになりかねない」と指摘し、「医療者が故意や隠ぺいの事案を厳正に処罰し、それ以外は刑法にかからないという医療法や医師法で整理ができれば100点」との見方も示した。

●「刑事罰は残すべき」ハートクリニック・佐藤院長
 一方、ハートクリニックの佐藤一樹院長は、「社会的に許せず、どうにかして処罰するという観点で業務上過失致死となる事案がある」と指摘。かつて東京女子医科大付属日本心臓血圧研究所循環器小児外科に助手として勤務した際、医療事故について院内調査委員会が報告書に誤った記載をしたことで7年間、刑事裁判の被告人となり、冤罪被害者となる可能性があった経験がありながら、「業務上過失致死傷罪を変えようという考えはない」と主張した。佐藤院長は「医者でも悪い医者は本当に悪く、クロに近い過失もある」とも述べ、医療行為を業過罪の対象から外すべきではないとの考えを示した。(12/4MEDIFAXより)

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