【有床診】有床診の防火策、点検体制などソフト面も/検討部会が初会合  PDF

【有床診】有床診の防火策、点検体制などソフト面も/検討部会が初会合

 2013年10月に福岡市の安部整形外科で入院患者らが死亡した火災を受け、総務省消防庁は11月7日、有床診療所火災対策検討部会の初会合を開いた。13年度内をめどに有床診の防火対策をソフト・ハード両面から検討する。初回は消防庁、国土交通省、厚生労働省の担当者が各省庁の対応やスプリンクラーの設置基準を説明し、委員が自由に意見を交わした。医療側の委員からは、防火設備の設置が義務化されれば病床を閉鎖する有床診が相次ぐのではないかと懸念を示す声や、財政支援の必要性を訴える意見が出た。

 部会長には、認知症グループホーム等火災対策検討部会の部会長を務めた室益輝委員(ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長)を選出。医療関係者では▽安藤高朗委員(四病院団体協議会)▽市川邦男委員(全国自治体病院協議会理事)▽葉梨之紀委員(全国有床診療所連絡協議会長)▽藤川謙二委員(日本医師会常任理事)─が参加した。厚労省医政局指導課の梶尾雅宏課長と国交省住宅局建築指導課建築物防災対策室の石崎和志室長も委員として名を連ねた。

 有床診連絡協会長の葉梨委員は「こういう事態を招いたことについては非常に責任を感じている」と冒頭に述べた。連絡協会員を対象に実施した防火安全体制に関するアンケートの中間集計も報告した。アンケートでは、回答施設のうちスプリンクラーを設置していなかった有床診は9割・757施設に上り、そのうちスプリンクラー設置が義務化された場合に「補助金などの支援があれば設置する」との回答が57%・435施設、「病床の廃止を検討する」が25%・188施設だったとした。葉梨委員は、有床診が全国に約9000施設あることを踏まえると約2000施設が病床廃止を検討することになるとし「廃止するところが増えれば、無医村や無医地区が増える」と懸念を示した。

 藤川委員は、全国の有床診の3割は赤字の中であえいでいるとし「設備投資をする資金もなければ、看護師2−3人で夜勤を組むような人件費も出ないのが実態」と指摘。防火処置やスプリンクラー設置を含めた財政措置をしっかり行う方向を同部会として示すよう求めた。安藤委員は、国民感情ではスプリンクラーを設置してほしいという思いもあるとする一方、有床診や中小病院の経営が非常に厳しいことから「できれば国からの全額補助が必要」と述べた。

 消防庁の米沢健予防課長は委員らの意見を受け「有床診が非常に重要な役割を果たしている一方で、経営上は厳しい立場にある」と指摘。「スプリンクラーの話もあったが、設備を強化すればよいのではなく、防火戸をきちんと点検する体制など、ソフト・ハード両面でバランスよく考えなければならない」と述べた。(11/8MEDIFAXより)

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