【日医】TPPなくても皆保険への脅威ある/日医政策シンポで識者ら
日本医師会は3月6日、東京・本駒込の日医会館で医療政策シンポジウムを開き、環太平洋連携協定(TPP)や混合診療の全面解禁などをテーマに意見交換した。パネリストとして参加した学識経験者らは、国民皆保険を守るべきとの考えで一致。TPP参加の有無にかかわらず、米国は混合診療の全面解禁など皆保険を脅かす要求をしてくる可能性があるとして懸念を示す意見もあった。
●グローバル株式会社の参入困る/田中教授
田中滋教授(慶応大大学院経営管理研究科教授)は「混合診療の全面解禁は、社会と市場経済を支える重要な社会資本である国民皆保険にヒビを入れるもので絶対に許してはいけない」と述べた。株式会社の医療参入については、日本の医療制度はローリスク・ローリターンとなるように設計されているため「リスクを取ってももうけたい」というグローバル資本主義の株式会社に参入されては困ると指摘。ただ、「家業型」の株式会社による参入についての判断は難しいとした。
TPPについては、交渉参加の有無にかかわらず、米国から皆保険制度の安全を脅かす要求はあるとして、「皆保険制度を守るという覚悟を持って、農業・金融など他分野と連携して日本社会の良さを守るようにすべき」とした。
●皆保険は「聖域」に含まれない可能性/金子教授
金子勝教授(慶応大経済学部教授)はTPP交渉参加反対の立場から、聖域化されるのはコメのみで皆保険は聖域に含まれない可能性は高いとした。また、医薬品・医療機器の認可手続きの簡略化や、民間保険の拡大を認めれば、ISD条項に基づく訴訟によって混合診療の全面導入につながる可能性があると指摘した。
●多国間交渉で「米国言いなりに終止符を」/土居教授
一方、土居丈朗教授(慶応大経済学部教授)は皆保険制度は守るべきとしながらも、「TPPの多国間交渉で、米国の言いなりに終止符を打つべき」と主張した。その上で「結果的に医療保険財源を国民が負担を分かち合う形で確保できなくなれば、財政上の事情から給付できなくなる」と指摘。公的医療保険の給付が限定的になれば、民間保険会社が積極的に求めなくとも市場を開放することになりかねないとし、TPP問題の有無にかかわらず、こうした状況が生じることに懸念を示した。(3/6MEDIFAXより)