【日医】TPP、総論理解も皆保険堅持に懸念/日医・横倉会長
日本医師会の横倉義武会長は2月27日の会見で、安倍晋三首相から日米首脳会談の帰国直後に「総論的に国民皆保険は守った」と電話で連絡があったことを明らかにし、環太平洋連携協定(TPP)に対する政府の考え方に一定の理解は示した。ただ、「公的医療保険制度が揺るがされることを懸念している」との認識をあらためて示し、日医が国民皆保険を守るために掲げた「3つの条件」が守られなければ、TPP交渉参加は容認できないとした。
日医が挙げる国民皆保険を守る条件は▽公的な医療給付範囲を将来にわたって維持する▽混合診療を全面解禁しない▽営利企業(株式会社)を医療機関経営に参入させない−の3項目。
横倉会長は24日に安倍首相から電話を受け、25日には官邸で加藤勝信内閣官房副長官から日米首脳会談の詳細を聞いた。自民党の衆院選公約を米国側に示し、了解を得たと説明を受けたという。「共同声明には医療という言葉は入っていなかったが、資料や同席した加藤副長官の話から、国民皆保険は維持はされると思っている」と述べた。
ただ、「国民皆保険を守るという総論は理解できるが、各論の問題がまだある。そのことに留意して最終判断をしていただきたい」と指摘。「日本の国益に反する形でのTPP交渉参加には反対」とする趣旨の文書を27日、官邸に提出したことを明らかにした。
横倉会長は「(3項目を満たしても)賛成とまでは言えない。政府にしっかり守るとの発言をしてもらうことが前提条件」と慎重な姿勢を示した。「国民医療を守る上でTPPへの参加でどういう影響があるかをしっかりと見ていかないといけない」とも述べた。
●「危機感を持って発言したい」/中川副会長
中川俊男副会長は「国民皆保険を守るという安倍首相の発言を信頼するが、これまでの経緯や直近の状況を踏まえると、国民皆保険が揺らぐ懸念を払拭することはできない」と指摘。政府に対して公的医療保険というものの理念を示すべきと求めた。
田村憲久厚生労働相が26日の閣議後会見でTPPについて「公的保険が影響を受けることは何としても避けなければならない」と述べたことに触れ、「危機感を持っているということだろう。日医も厚労省と協調し緊張感を持って発言していきたい」とした。
TPPに限らず、医療の営利産業化を進める動きが強くなっているとも指摘し、規制改革会議に注文を付けた。検討項目に上がっている保険外併用療養の範囲拡大は「混合診療の全面解禁のことではないと認識している」としたが、「規制改革の目指すところは公的給付範囲の縮小、民間市場の拡大にあると考えざるを得ない」と警戒感を示した。(2/28MEDIFAXより)