【日医】医療めぐる国家戦略特区を懸念/日医・横倉会長
日本医師会の横倉義武会長は9月25日の定例会見で、政府が成長戦略の柱に据える「国家戦略特区」について、「医療に関する国の適正な規制が壊されることを懸念している」と述べ、医療本体に過度な規制緩和が迫る可能性に危機感を示した。
国家戦略特区について政府は、民間企業や地方自治体からの1次募集を締め切っており、各提案の絞り込みを経て複数の特区を指定する予定。提案の中には医療に関する内容も含まれ、外国人医師による医療行為の容認、保険外併用療養費制度の拡大、医学部の新設などが入っている。
●新自由主義では医療費むしろ高騰
横倉会長は「年々増えている社会保障の安定財源として消費増税の具体化が検討されているが、給付の適切な効率化は避けられない」と述べ、何らかの対応が必要であると理解は示す一方、「新自由主義の市場メカニズムによる効率化では医療費抑制は不可能で、むしろ高騰を招く」と医療本体への過度な規制緩和がもたらす危険性を指摘。安倍政権の経済政策には「反対していない」としたものの、新自由主義的な医療制度改革で医療の市場が拡大したとしても、根本的な問題解決にはつながらないと説明した。
●命と健康、特区で犠牲に
その上で、政府は国民の命と健康を最重要に据えて政策を進めるべきと提言。「社会保障と経済は相互作用の関係にある。経済発展が社会保障の財源基盤を支え、社会保障の発展は生産誘発効果などを通じて日本経済を下支えしている。国民は特区で命と健康を犠牲にしてまで、国の経済の強い発展を望んでいるのだろうか。国民の命と健康を最重点に考える政府であってもらいたいと強く願う」と語気を強めた。
横倉会長は特区の指定に関する個々の提案にも言及。このうち外国人医師の診療に関する提案は、日本と他国の医師免許を認める「クロスライセンス」を求める要望なのか定かではないとした上で「国家が認証する資格への規制緩和は一方的ではなく、相手国との相互主義であるべき。クロスライセンスで外国人医師を受け入れた場合、医療の教育水準の違いから日本の医療水準が低下する可能性も考えるべき」と指摘した。
●安全性の確認は極めて慎重に
保険外併用療養費制度の拡大に関しては、日医は混合診療の全面解禁に反対との立場を明確にした上で「特区の中で危険な医療を行うことはあってはならない。安全性の確認は極めて慎重に行うべき。保険外併用療養費制度の下でより迅速に評価する仕組みが構築されつつあるので、これをしっかり支援したい」と述べた。(9/26MEDIFAXより)