【日医】「混合診療の全面解禁」は一種の幽霊/日医シンポジウム  PDF

【日医】「混合診療の全面解禁」は一種の幽霊/日医シンポジウム

 日本医師会の医療政策シンポジウムが3月13日、東京・本駒込の日医会館で開かれ、パネルディスカッションでは横倉義武会長や有識者が規制改革に関して意見を交わした。「混合診療の全面解禁」については、国民の健康と命を守るための規制は必要であり、かえって公費負担も増大するとして疑問視する意見が相次いだ。

 シンポジウムにはジャーナリストの堤未果氏、ノンフィクション作家の関岡英之氏、慶応大教授の土居丈朗氏、医療介護福祉政策研究フォーラム理事長の中村秀一氏が登壇し、横倉会長とともにディスカッションに臨んだ。

 横倉会長は政府の規制改革会議などで医療の規制改革に対する意欲的な意見が出ている点に触れ、医療本体の規制は国民の健康を守る意味での規制であり、医療機関を守るためのものではないと強調。「政府は医療の周辺の改革を通じてイノベーションを進めているが、これとは分けて考えてもらいたい」と述べた。

 米オバマ政権が進める医療保険制度改革(オバマケア)のさまざまな欠点を指摘した堤氏は「お金を持っている人には天国のような国」と米国医療の“ゆがみ”を紹介。「日本政府が米国の医療政策を追いかけているとは思わないが、国家戦略特区で医療の大幅な規制緩和をしていくなど『矛盾している米国型』に進むような審議が行われている」と警戒感を示した。

 関岡氏は「規制改革を議論するところに、日医や医療従事者がメンバーとして参加していない。一方で薬のインターネット販売を手掛ける立場が委員として参画している」として、政府の議論の進め方自体を疑問視。規制改革会議の岡素之議長(住友商事相談役)が1月21日の記者会見で「会議としては、現制度の量的拡大にとどまることなく、ステージの違う質的改革を求めていきたい」と述べたことに触れ、政府は混合診療の全面解禁を目指していると分析し「政府は自由診療を進めたいのだろう。自由診療自体を否定するつもりはないが、制度を変えるには社会的影響が大きいので、慎重な吟味が必要」と述べた。

 土居氏も混合診療の全面解禁は反対との立場を示して「より少ない負担でより良い医療が受けられるのかといえば決してそうではない。財務省などがその辺に気付き、全面解禁は公費の投入を増やしかねないので、いかがなものか、というようなことになれば議論も歯止めが利くのでは」と述べ、全面解禁の短所を広く知ってもらうことが肝要だとの認識を示した。

 中村氏は自身が事務局長を務めた社会保障制度改革国民会議の議論を振り返り、「経済団体も参加したが、国民会議の委員から切り込まれると(規制改革について)実のある回答がなかった。間違った前提を思い込んでおり、議論の土俵を現実的なものにすべき。規制改革は村山政権時代から議論し始め、その時から混合診療が挙がっていたが、メリットとして何が得られるかはっきりしない。一種の幽霊みたいなもの」と切り捨てた。(3/14MEDIFAXより)

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